不動産の証券化と証券化投資

土地・建物の現物投資のメリット・デメリットとは!?

現在では、不動産はJリートなどの証券化された形式で投資する形態が普及しているが、もともとは不動産そのものである現物に投資するスタイルがベーシックだった。現在でも不動産投資といえばアパート・マンション経営が第一に挙げられる。この投資手法は他の不動産に投資する手法(小口化投資証券化投資など)と比較して、どのような特性とメリット・デメリットがあるのか?

まずは特性としては、投資する不動産の個々の物理的な特性(立地や建物の構成など)が、そのままメリットにもデメリットにもなり得る点がある。これをメリットと捉えれば、投資対象の不動産の選択肢が広く、地域分散による天災リスクの低減ともなる。特に後者の天災リスクは不動産投資では大きな要素であり、火災・地震は元より、台風・洪水・竜巻などの不動産が滅失して収益性がゼロになる最悪のシナリオ(リアルエステートリスクを参照)が不動産投資にはある。その意味で地域分散できる点は大きい。ただし、小口化・証券化投資であれば分散投資は現物投資よりも容易で、むしろ他の2つと比較すればリスクとしての側面の方が際立つ。

また、メリットとしては、現物投資なら不動産の節税効果が見込める。特に損益通算による所得税対策、減価償却による費用の計上(利益増と安定化)、相続税の不動産評価額の低減による税額減なども挙げられる。こちらは証券化投資には無いメリットといえよう。

他方のデメリットとしては、そもそも1つ1つの不動産に対する投資額が大きい点が挙げられる。1つの不動産の単価が高ければ、前述の天災リスクは元より賃料収入の減少が全体に及ぼす影響が大きくなる。例えば、東京にある不動産Aと大阪にある不動産Bで、東京の不動産Aの空室率が減少しても不動産Bが良好なら、不動産Aのみを保有しているよりも分散が効くことになる。ただ、これを広げると多額の資金が必要になり、さらには不動産市場の平均値に徐々に近づいていくことも知っておく必要がある。つまりは効率的な賃貸物件をかき集めたとしても、最終的には効率化には限界があるということだ。

また、不動産への現物投資で忘れてはならないのは、維持管理業務(賃貸管理・建物維持)がある点だ。手間を要するのは元より費用が発生する点が見逃せない。これは他の投資手法でも発生している(証券化されても管理費用は内包されている)のだが、大手であればスケールメリットを活かした管理運用ができ、費用も総じて落とすことができる。その一方で、個々の物件となると大手よりも高くなるのは否めない。

以上が不動産の現物投資を他の投資手法と比較したメリット・デメリットだが、流動性・投資単価という意味では他の不動産への投資手法と比較して劣るのは否めない。ただ、相続税などの税金面で有利な点や、市場環境に影響を受けにくい点で秀でている面もある。必ずしも現物投資が悪いわけではない点は忘れずにおきたい。また、不動産投資について不安があるようなら、FP・銀行・証券会社などの専門家の意見や、都道府県主催の不動産相談会(不動産投資セミナー)や相続相談会なども利用したいところだ。