原状回復・リフォームの費用削減等のポイント

原状回復で入居者負担にできても施行範囲・耐用年数によっては!?

アパート経営などの不動産投資では、退去後の原状回復については国土交通省のガイドラインや東京ルールによって、原状回復でオーナー負担となる部分と入居者負担となる部分の線引きは明確になりつつある。かなりオーナー負担となる部分が多いが、運よく入居者負担となったとしても、施行範囲・耐用年数によっては逆に負担額が大きくなることもある。

入居者負担とオーナー負担で記述したように、入居者の故意・過失・善管注意義務違反によって傷ついたものは入居者負担となる。例えば、畳を通常外の利用で変色させれば入居者負担となるが、その施行範囲に注意が必要だ。仮に変色したのが1畳だけであれば、その部分だけ入居者負担となる。その畳を取り替えることで、他の畳と異なる劣化具合になることもあるだおう。畳を統一するために全ての畳を替えたくなるのが人情だが、入居者負担となるのは変色させた1畳だけとなる。

施行範囲の例(1畳だけ汚れが付いて、色合い統一のために全ての畳を変えた場合)

上図の例では1畳が取替えの対象となったが、壁紙クロス・フローリングは1平方メートルあたりでの交換となる。これは施行最小単位と呼ばれ、「破損部分の補修は施行に必要な最小単位」で行うこととされている。ただ、壁クロスだとクロスの張替えによる見た目の違いが著しい場合には1面分まで、フローリングでも破損・毀損が複数であれば居室全体を入居者負担とすることができる。

ただし、入居者負担にできたとしても耐用年数・経過年数を差し引いて請求することになる点に注意が必要だ。原状回復と今後の対策でも記述したように、入居者が長く住んでもオーナー負担の部分はオーナー負担となる。つまりは破損が入居者負担となったとしても、それは経年劣化後の残存価値から破損部分のみを負担してもらうということだ。これはガイドラインにも記述されている。そのため、例えばIHクッキングヒーターが入居者の過失で破損していたとしても、経過年数が5年経過していれば、新品価格ではなく5年後の残存価値でしか入居者に請求できないことになる。

経過年数のチャート(設備などの経過年数と賃借人負担割合)

この経過年数の概念もオーナーにしては不利ではあるが、経過年数が考慮されるものは明確に区分されている。経過年数が考慮されるのは、前述の設備機器の他に壁紙クロス・カーペット・クッションフロアなどが挙げられる。経過年数が考慮されないのは、フローリング・ふすま・畳・タイル・ガラスなどが挙げられる。入居者には、経過年数が考慮されるものへの不断な手入れをお願いするといいかもしれない。

以上が原状回復での施行範囲・経過年数についてだが、根本的に入居者(賃借人)に有利となる法改正が進んでいるため、入居者負担の範囲は元より経過年数の概念も入居者に有利になる可能性がある点は忘れずにおきたい。また、何か原状回復について不安・疑問があれば、インターネット・書籍などの情報だけでなく、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して同業者の意見・経験談を得るのも1つの手だ。