アパート経営での入居募集や維持管理など

保有物件内での孤独死が発生するリスクに備えるには!?

不動産投資・アパート経営では、少子化・高齢化を考慮して高齢者も入居者のターゲットに入れているオーナーが多い。国としても高齢者も受け入れる賃貸物件を推進しており、この流れは今後も当面は継続するだろう。しかし、高齢者となると建物内での孤独死というリスクが出てくる。

まず孤独死についてだが、孤独死は各種マスコミに騒がれていることから分かるように、年々増加している。下図(左グラフ)は東京都福祉保険局の東京23区内の孤独死数の推移だが、約10年前と比較して数が2倍以上に膨れ上がっている。さらに、下図(右グラフ)は都市再生機構の賃貸物件内で相当期間経過後に発見された孤独死数の推移だが、こちらも年々増加している。

東京23区内の孤独死数の推移と賃貸物件内で相当期間経過後に発見された孤独死

当然ながら、孤独死数が増加しているとはいえ賃貸物件とは限らないが、冒頭でも記述したように昨今では高齢者にも賃貸物件を開放する方向にあるため、今後も増加こそすれ減少するとは考えにくい。さらに、相当期間経過後に発見された孤独死が多いのも不動産オーナーには大問題だ。時間経過が長引くほどに室内が荒れている可能性があり、その結果として修理費・修繕費が膨らむためだ。

そういったリスクを回避すべくリリースされたのが、大家向けの孤独死のリスクをカバーする保険だ。現在ではエース保険の「オーナーズセーフティ」とアイアル少額短期保険の「無縁社会のお守り」がある。下図はエース保険の場合の補償内容だが、前述した修理費・修繕費の補償以外にも、遺品整理などの事故対応費の補償も含まれている。

エース保険の「オーナーズセーフティ」の補償内容

注目すべきは、12ヶ月分の家賃補償が補償に含まれている点だ。前入居者の契約終了から30日以上経過しても新しい入居者が決まらなかった場合に、家賃補償という名目で月額家賃の80%分が12ヶ月に渡って受け取れる。

これは自殺・孤独死があった物件は、次の入居者に事故があった旨を説明しなければならないという法律が関係している。もちろん、何年前の事故まで説明しなければならないかという明記はないが、事故後から2~3年は必要とされることもある。数十の戸室の1つであれば影響は軽微だろうが、5~10戸程度のアパートであれば確実に1つ空室が出るというのは収支を圧迫する要因になる。その点で大家には大きなメリットの補償といえる。

それでは肝心の保険料だが、エース保険の場合には家賃補償の額・原状回復費用の額などでプランが分かれ、さらに部屋の広さによって料金が分かれているようだ。ただ、下図の月額家賃が6万円の場合には最も補償が手厚いAプランでも月額280円で、年間でも3360円で済んでいる。仮に10年後に事故が発生したとしても軽く元が取れる水準ではある。

エース保険の「オーナーズセーフティ」の保険料と選択プラン

注意したいのは、死亡事故といっても天災によって死亡した場合や、建物の物理的な欠陥によって入居者が死亡した場合には補償の対象とはならない点だ。建物の物理的な欠陥によって入居者が死亡した場合には、施設賠償責任補償保険を利用することになる。

以上が不動産オーナーが抱える孤独死のリスクとリスクに備えるための保険についてだが、
基本的には加入するに越したことはない。ただ、自分の保有物件の入居者層から判断して、不要であれば無駄に経費を増やす必要はない。また、保険で何か不安があればネットや書籍での情報収集だけでなく、保険代理店・FP・銀行などの無料相談を利用したり、不動産相談会(不動産投資セミナー)などで同業者の評判を聞くのも手だ。