不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

高齢化と政府の後押しがあっても不動産投資でサ高住は不透明!?

アパート経営などの不動産投資では、人口動態で有利な東京・神奈川などの投資物件・収益物件がオススメなどと言われる。ただ、人口動態で有利な東京といえども、2025年には人口が横ばいになると予想されており、人口減・少子化世帯増の停止についても誰も語らない。その一方で、高齢化によって高齢者が増えることは確実視されており、高齢者をターゲットにサービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)を不動産投資で勧める不動産会社もある。しかし、ここにも不動産会社が語らない不都合な事実がある。

まず、サ高住についてだが、費用が安い国・自治体が運営する特別養護老人ホーム(通称:特養)が満室で多くの入居待機者を抱えているため、民間で高齢者向けのサービスを備えた住宅を運営をしてもらうべく国土交通省が発案した。かつては、高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)・高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)などと分かれていたのも2011年にサ高住に一本化された。

同じ民間でもサ高住と有料老人ホームとの違いは、前者が安否確認・生活相談に加え一部の介護サービスが受けられるのに対して、後者は入浴・食事・清掃など日常全般の介護サービスが受けられる。もちろん、有料老人ホームでも住宅型であれば、それほど過剰な介護サービスが無かったりする。また、前者は賃貸借契約であるのに対して、後者は利用権契約と契約形態が異なるのも大きい。

さて、高齢者がターゲットのサ高住だが、確かに高齢者が増加しターゲット(需要)が増えることに異論はない。下図はサ高住の棟数・戸数だが、高齢化に伴ってサ高住の戸数も右肩上がりで増加している。これは国からの建設費・改修費の補助・税制優遇の他に、住宅金融支援機構の融資まで支援されている。

サ高住の棟数・戸数の増加チャート・グラフ

ここまでサ高住が増えてしまうと、入居率が下がっているのでは?と思うかもしれない。しかし、入居率は100%がサ高住の全体のうち23%、80~100%未満が約30%と全体の半数を占める。平均入居率にしても76.8%と高く、特養に近い費用帯のサ高住が出てくれば、入居率100%を維持できるのは間違いなそうだ。

サ高住と有料老人ホームの入居率

この結果を受けて、これからは単身者向けの収益物件ではなくサ高住だと考えるかもしれない。しかし、高齢化とは平均年齢が増えることを意味することを忘れてはならない。高齢化が進む要因は高齢者が増えること以外に、若年者が減ることでも高齢化は進む。下図は、人口問題の・・・・。これは前述の通り何の違和感も無いことで、これからは高齢者増加ではなく少子化による高齢化が進むのだろう。つまりは、今までのように高齢者増加でターゲットは増えない可能性があり、建築数が伸び続ければ需要と供給がマッチしない将来(2020年以降)が見込まれるということだ。

高齢者の人口の将来的な推移・推計

さらに社会福祉の側面が強い賃貸物件だけに、国によって設置基準・自治体への申請・登録、住宅の広さや設備・サービスの規則などが細かく定められている。これらの基準をクリアしたとしても、介護サービス・社会福祉法人との連携が必要であり、さらに高齢者の賃借人向けに通常の賃貸経営とは異なるサービスも必要になる。例えば、一般的にサ高住は軽度ならまだしも重度の認知症となれば空室(正確には他の施設に移ってもらう)となる。それを予防するための措置を講じたりする必要がある。それによって、キャッシュフローが悪化する可能性すらある。サ高住の不動産オーナーには、一定程度の高齢者介護に対する知識・ノウハウと、相応の理解が必要となるということだ。

以上が不動産会社が語らないサ高住についてだが、高齢化の事実と将来予測から考えて今からサ高住で不動産経営に乗り出すには、相当の覚悟と工夫が必要になるだろう。いっそのこと諦めてしまうのも手だ。どうしても諦めきれない人は、建物に相当の工夫をするか、FP・銀行と綿密な計画(金利や借入期間を調整)を立てるしかない。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・経験談で打開の糸口を探すのも1つの手だ。