住宅を取得するための住宅ローンの基礎知識

50代・60代からの住宅の買換え・リフォームで得するポイント!?

一般的に、新築で購入した住宅でも築20年が経過すると修繕・補修が必要になる。さらに子供が自立すれば夫婦2人分の広さで十分になるため、50代・60代から住宅の買換え・リフォームを検討する人は多い。50代なら退職までの時間が限られ、60代であれば既に退職している人が多いが、そういった場合に少しでも住宅の買換え・リフォームで得する方法はあるのだろうか?

まず住宅の買換えについてだが、パターンとしては①既存住宅を売却して新居を購入 ②既存住宅を賃貸に回す、の2パターンに分かれる。①既存住宅の売却を検討している場合、既存住宅の売却額は新築の頃の額よりも大幅に減っているため、住宅の譲渡による譲渡損失(赤字)が発生する可能性が極めて高い。

この場合の赤字額は、譲渡損失の繰越控除(正確にはマイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)という制度を利用することで所得税が減額される。端的にいえば、住宅の売却によって所得全体で考えれば赤字になっているため、給料・年金と損益通算して、給料・年金で受け取る前に差し引かれている税金が戻ってくる制度だ。赤字額が余れば3年間は引き継げるため、所得額にもよるが数十万円は節税できる(還付される)可能性がある。

また、住宅ローンが残っている段階で買換えを検討している場合でも、同様に節税できる。ただし、住宅ローンの残高が問題が関わってくるため、計算は少々複雑になる。

住宅ローン残高が残っている段階での譲渡損失の繰越控除と損益通算の限度額

上図の計算は少々複雑だが、基本的には住宅ローン残高から既存住宅の売却代金を差し引いた額が損益通算できる額と考えればいい。仮に住宅ローン残高が3000万円で、既存住宅の売却代金が2000万円なら「3000-2000=1000万円」が損益通算できる額になる。注意すべきは、あくまで譲渡損失が発生している場合に使える制度という点だ。そのため、売却代金が購入代金を上回る場合、もしくは住宅ローン残が既存住宅の売却代金でチャラになるようなら、この制度は利用できない。

一方で買換えではなく、リフォームを検討している場合に何か手はあるのか? リフォームの場合は売却するわけではないため買換えのような手は使えない。そのため、リフォーム資金を如何に調達するかが問題になってくる。資金調達の方法は①自己資金 ②保険金 ③リフォームローンがあるが、金利を考えれば自己資金がベストではある。もしくは夫か妻の保険金でリフォームする手もあるだろう。

他方で自己資金が多額ではなく、夫婦が両方とも健在となるとリフォームローンを利用することになる。ただ、このリフォームローンは返済期間が短く(10年程度が一般的)、かつ金利も一般的な住宅ローンよりも高めなことが多い。そのため、リフォームローンを利用せずに得する方法として「財形住宅融資」と「高齢者向け返済特例制度」を検討した方がいい。

「財形住宅融資」は、財形住宅貯蓄(住宅取得のための財形貯蓄)を利用して自己資金を貯めている人だけが利用できる住宅金融支援機構の住宅ローンだ。財形は勤務先で利用できる給与から天引きされる貯蓄方法で、一般的には30代が利用することが多い。

ただ、この財形住宅融資のポイントとして、リフォーム融資でも通常の住宅融資と同様の金利・条件になる点が挙げられる。そのため、リフォームを考えている50代でも低金利で返済期間が長めのローンを組める可能性があるため、十分に検討する余地があるといえる※公的住宅ローンも参照

もう1つの「高齢者向け返済特例制度」も住宅金融支援機構の制度で、満60歳以上だと利用できる。この制度はバリアフリー工事・耐震化に限られるが、申し込んだ本人が死亡するまで借入金の利息分だけ支払えばいいという破格の処置となっている。借入金の元本は死亡時に一括して返済(担保になった土地・建物の売却等)される。

高齢者向け返済特例制度の主な特徴

もちろん、メリットばかりがあるわけではない。融資限度額は連帯保証人となる高齢者住宅財団が担うため、1.5%の保証料や3.5%の事務手数料が必要になってくる。さらに融資額も高齢者住宅財団の保証する額か1000万円以内となり、決して多額の借入はできない。とはいえ、1000万円を借り入れても毎月の返済額は約1~2万円と極めて少額なため、主な収入源が年金である老後にリフォームするには最先鋒の手法といえる。

以上が住宅ローンの条件変更についてだが、何か疑問があれば最寄の銀行を訪れるか電話で相談するといいだろう。税金の軽減などは各自治体が主催する無料の税金セミナーや、税理士の無料相談を利用するのも手だ。