相続税の計算

相続税の歴史・変遷から考えた相続税の今後の見通し!?

相続税は相続によって財産を得た人に課される税金だが、その変遷を辿っていくと増税されているばかりではなく、減税された場面もあったことが分かる。また、前回の税改正は平成25年改正(平成27年から適用)だったが、変遷を辿ると次回の改正の時期と内容も朧げではあるが見えてきそうだ。

まず、平成以降の相続税の改正をまとめたのが下図だ。税率の段階数も遺産に係る基礎控除額も、上下を繰り返していることが分かる。控除額は増額されると減税傾向にあり、逆に減額されれば増税傾向にあるといえる。また、税率の段階は一概にはいえないが、段階数が増えるほどに相続税の上限の税率が上がることを考えれば、段階数が増えれば増税傾向にあるといえるだろう。

平成以降の相続税及び控除の変遷

上図の流れからすると、まずは昭和から平成4年の改正で相続税は緩和されており、続けて平成6年の改正では一段と緩和されている。特に平成6年の改正は控除額の増額は元より、最高税率が適用されるのが相続財産10億円から20億円に引き上げられており、加えて配偶者控除まで倍額の1億6000万円まで広げられている。

これはバブル景気の真っ只中で、一般市民も地価高騰により多額の相続税が発生してしまったため、政府が国民の声に応えたものと考えられる。しかし、実際にはバブル崩壊後の不景気後の平成15年の改正でも控除額は据え置きされ、税率に至っては上限の税率が下げられており緩和されている。

当時の税制大綱・答申を見る限り、相続税を増税して国の財政に回すよりは、景気刺激策として緩和されたようだ。相続税の改正と同じくして贈与に関しても改正が行われており、贈与によって次世代に富を移して消費を刺激したかったようだ。ただ、歴史を見る限り、その効果は火を見るより明らかではあるが。。。

そして、直近の改正である平成25年の改正(適用は平成27年から)では、それまでの方針から一転して相続税の増税が図られた。控除額の引き下げと共に、最高税率の引き上げなどが行われている。

この背景には税制大綱を見る限りでは、高齢化による国の社会保障費の負担が増えたことと、平成15年時と同じく富を若年層に移す目的があるようだ。また、少なからず富の再分配(経済的な格差の是正)もあると考えられる。この税改正が如何なる結果をもたらすか、もしくは何の効果も無いかは歴史が証明するだろう。

さて、ここまでで大まかな流れは掴めたが、それでは今後数年では相続税は増税されるか現在されるかどちらだろうか? まず税改正のペースだが、これまでは2~9年のスパンで改正が行われている。ただ、比較的大きな改正に絞れば7~9年ペースとなっているため、次の改正は平成32年改正で平成34年から適用(2020年改正で2022年から適用)あたりが怪しくなりそうだ。

増税か減税かの予想は難しいが、国の財政を考えれば増税される方向になるのは間違いないだろう。そもそも相続税の減税の方向性が20年継続したことを考えれば、2040年ぐらいまでは増税方向が続いても不思議ではない。ただ、バブルの頃のような地価高騰が起きたり、新興国のようなハイパーインフレが起きれば、再び減税方向に転じる可能性はある。ただ、今のところは可能性は低いだろう。

以上を踏まえると、平均寿命(女性87歳・男性81歳)から考えて20年内に相続が発生しそうなら、速やかに相続税対策を進めておいた方が賢明だ。60代でも相続を意識し考え始めてもいいかもしれない。他方で40代であれば、一回りして減税方向に入る可能性があるため、相続対策を考えなくてもいいかもしれない。40代で相続を意識する人の方が稀有かもしれないが。。。

以上が相続税の変遷と見通しについてだが、相続について不明点・疑問点があるようなら、ネット・書籍などで情報収集すると共に、税理士・信託銀行などの無料相談や、自治体主催の無料参加できる相続セミナー・相談会で直に専門家に確認してみるのも手だろう。