埋葬・墓(墓地)・仏壇の基礎知識や選び方・予算など

宇宙葬のメリット・デメリットと費用の目安は!?

昨今では「墓が無い」「墓の継承者がいない」「墓を建てる費用が大きな負担」等々の理由で、遺骨を自然に還す自然葬が人気になっている。自然葬は散骨・樹木葬などがあり、散骨で最もポピュラーなのが海洋葬だが、その他に宇宙葬というものがある。海洋葬の自然に還るという発想よりは、より個性的で遺族も楽しめるような埋葬方法として認知されているようだ。

宇宙葬の概要だが、海洋葬が海に遺骨を撒くのに対して、その名の通り宇宙葬は宇宙に遺骨を撒くことになる。ただ、正確には「宇宙に限りなく近い場所で散骨」するパターンと、「実際に宇宙空間に運んで散骨」するパターンに分かれる。当然ながら距離・移動方法の関係で前者の方が費用は安価で、後者は費用が格段に高くなる。

まず宇宙に限りなく近い場所での散骨だが、これは「バルーン宇宙葬」と呼ばれるもので、巨大バルーンに遺灰を入れて上空に飛ばして散骨する方法だ。高度30キロ近辺の成層圏でバルーンが破裂して遺灰が散ることになる。バルーン工房という会社が実施しており、料金は約20万円~となっている。宇宙層の1つではあるが、正確には宇宙には到達していないが、上空の風に乗って日本中・世界中に遺灰が散る。

宇宙層のプラン一覧

もう1つは遺灰をカプセルに入れてロケットで本当に宇宙まで飛ばす「スペースメモリアル」というものがある。銀河ステージという会社がアメリカのセレスティス社と提携して実施しており、同じ宇宙に行くにも幾つかのプランがある。遺灰をロケットに搭載して宇宙まで行く宇宙飛行プランは約50万円~で、人工衛星に乗せて地球の軌道上を周回する人口衛生プランは約100万円~となっている。さらに月まで行く月旅行プランや、宇宙探査機に搭載して宇宙の果てを目指す宇宙体験プランもあり約250万円~となっている。

それでは宇宙葬には、どのようなメリットがあるのか? 1番大きいメリットは「宇宙旅行ができる」「自然に還る」「地球が墓(ロマンがある)」という精神面が大きい。特にバルーン宇宙葬であれば海外旅行が好きだった人は、自分の死後は世界中を風に乗って旅ができると思えばロマンがあるだろう。また、海ではなく地球全体が自分の墓だと思えば、海洋などへの散骨より自然に還るといえるかもしれない。

墓参りをする側にとっては、どこの空を見上げても供養ができるともいえる。また、海洋葬と同様に供養をするシチュエーションを考えてみるに、毎朝に仏壇に向かい合って拝むより、朝日が昇る空(お天道様)に向かって拝んだり、夜に月を拝む(前述の月旅行プランの場合)方が、よりロマンがあると感じる人は多いだろう。

宇宙葬の参拝のイメージ

他方のデメリットは海洋葬と同様に「分骨しない限りは墓は無い」「遺骨は取り戻せない」「親族からの反感」「散骨の実施数は多くはない」「費用は墓と同額程度になる」等々が挙げられる。特に墓が無いと拝む対象として空があるとはいえ、そこに故人がいるかを確信できないため虚無感に襲われる可能性がある。

それに気づいて墓を立てようにも全ての遺骨を散骨してしまえば後戻りはできない。また、親類縁者が墓参りをしようにも墓が無いため、自宅まで焼香をあげにくる可能性もある。その親類縁者に「墓が無いとは罰当たり」「墓をケチるとは親不孝者」などと、故人の意思であるにも関わらず責められる可能性もある。

ただ、海洋葬とは異なり宇宙葬はスケールが圧倒的に大きい。そのため遺族から親族に故人の固い意思と伝えれば「変わった人だったからなぁ」「派手なことが好きな人だったからなぁ」と妙に納得してもらえる可能性がある。前述の人工衛星プランなどであれば、少なくともケチ呼ばわりされることは無いだろう。

地味に注意したいのは、宇宙葬の件数が通常の墓とは比べ物にならないほど少なく、依頼できる業者も数が限られている点だ。仮に今から自分の死後のことを予約したとしても、その業者が宇宙葬を止めてしまったり、経営破たんして実施できない可能性がある。それに気づかずにエンディングノートに宇宙葬を希望する旨を記載しっぱなしだと、残された遺族がどうしようもなく可能性が出てくる。エンディングノートに記載するなら代案も記入しておいた方が賢明だ。

以上が宇宙葬についてだが、デメリットは故人が事前に遺族・親族に理解を求めて説明したり、遺骨の分骨や手元供養で解決される面もある。デメリットを事前に把握し対処することが重要といえそうだ。その他に墓・墓地について不明点・疑問点が出てきて、ネット・書籍等で不足するようなら、セミナーや見学会に参加して専門家や同じ境遇の人の話を聞いてみるのもいいだろう。