各所得の概要と課税額の計算(税率・控除・非課税制度等)

年収800万円なら業務に伴う出費が100万円以上なら特定支出で節税?

給与所得は給料・賃金・賞与(ボーナス)などの給与による所得で、その計算は非常にシンプルで、収入額から給与所得控除を差し引いた額で計算される。通常は、この給与所得控除に所得税が課せられる。

しかし、この例外・特例として特定支出による控除がある。この控除は、仕事のために必要だった出費を課税される給与所得の額から差し引く特例だ。この特例を利用することで、課税される給与が減り節税(確定申告で税金が還ってくる)できる。

問題となるのは、この特例を利用できるかどうかだが、そのハードルは2013年に大きく下がった。特定支出の額が給与所得控除の額(後述の表を参照)の2分の1を上回る場合に利用できることになった。計算式としては下図のようになる。

給与所得の特定支出の控除の特例の計算式

この計算式を言い換えると、給与所得控除額を超えた部分だけが、特定支出として給与から控除されるということになる。具体的に特定支出がいくらまで到達すれば意味があるかは、下図の2015~2017年の給与所得控除額で、自分の給料の額(各種控除と税金を差し引く前)が該当する箇所の控除額を見るといい。注意したいのは、2013年から給与所得控除額の半額を超える部分が基準額となる点だ。

給与所得控除額

例えば年収800万円だと、80万円+120万円で200万円が給与所得控除となり、特定支出の特例を利用するには200万円の2分の1である100万円(基準額)を超える必要がある。そして、この100万円を越えた部分のみが特定支出にできる。さすがに以前の200万円よりハードルは下がったが、それでは何の出費を特定支出にカウントすることができるのか?

2013年以前からあった特定支出には、通勤のための移動費(定期費・電車代)、転勤に伴う転居費(引越し代)、業務上必要な知識・資格をとるための支出(研修費・資格取得費)、単身赴任の人の帰宅費などが該当する。

ここに2013年から、職務に関連する図書(本・書籍)の購入費、職場で着用する衣服(作業着など)の購入費、職務に必要な交際費などが含まれるようになった。交際費には接待などの他に贈答品も含まれる。

とはいえ、これで年収600万で約90万円、年収800万で100万円といったハードルをクリアできるかは微妙なところだ。それも何とか積み上げてハードルをクリアしたとしても、その効果にも疑問が残る。仮に年収800万円で150万円の特定支出を出すと50万円の控除となるわけだが、この50万円が確定申告で還ってくるわけではない。給与50万円分の所得税が軽減されるだけのため、およそ10万円が還ってくるに過ぎない。150万円も身銭を切って10万円が還ってくることに意味があるのか。。。さらに65万円という上限もある。。。

以上が給与所得の特定支出の特例についてだが、実際に特例を利用するには明細書の他に給与支払者(勤め先)の証明書なども必要になる。仮に条件をクリアできそうだとしても、手続きでミスをすれば意味が無い点も注意したい。また、確定申告等の税金で悩む・迷うことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)で確認したり、税理士の無料相談を利用するのも1つの手だ。