所得税の概要と仕組み(税率・控除・計算など)

所得を計算するときの収入金額は確定申告では地味に落とし穴!?

所得税額は年収ではなく所得額を元に計算され、所得は収入金額から必要経費を差し引いた額で算出される。一般的に(教科書では)収入金額とは「収入することが確定した金額」とされているが、収入することが確定した金額とは、一体どういう意味なのか?

まず「収入することが確定」という意味だが、「1年間(1月1日~12月31日)に獲得した収益」ともいえる。会社員であれば1年間の保険料などの控除を差し引く前の給料であり、一般的に言われる年収額が該当する。もちろん給料以外の収入、例えば株・投資信託・FX・バイナリーオプション・先物取引・ワラント等々で利益が出ていれば収入に含まれる。

ただし、株・投資信託などの収入(利益)は、あらかじめ証券会社の方で所得税を差し引いて顧客に利益を渡す源泉徴収になっているため、収入ではあるが所得税・確定申告という観点では落とし穴にはならない(詳細は株取引と税金を参照)その一方で、FX・バイナリーなどは雑所得となり、収入ではあるが雑所得という別扱いとなるため注意が必要だ(詳細はFXなどと税金を参照)。こちらは落とし穴になり得るため注意が必要だ。

さて、「収入することが確定」という意味は、自営業などの個人事業主であれば1年間の売上ということになる。売上イコール収入と考えてもいいだろう。個人事業主で注意すべきは、未収の金額(一部未回収)が収入に含まれるという点だ。

仮に雑貨屋で、12月に商品を売却したが、実際に代金を受け取るのは翌年の1月という場合でも、12月に売却した以上は12月分の売上としてカウントされる。12月に代金の一部を回収し、残りは翌年に支払われる場合も同様だ。

また、アフィリエイトなどでは成果が発生した時点で報酬が発生するため、成果報酬が振り込まれるのは基本的に翌月になる。11月分の成果報酬が12月末に支払われ、12月分の成果報酬は翌年1月に支払われる。しかし、あくまで報酬が確定した時点で収入になるため、12月分の成果報酬は1月に振り込まれようと、12月分の売上として確定申告する必要がある。スタート時点で振込まれた1~11月で計上してしまうと、その後は延々とズレた状態で確定申告をするはめになるため注意したい。修正申告することになれば、その手間は計りしれない。

次に「(確定した)金額」についてだが、金銭による収入であれば、その金額で計上することは容易に想像が付く。しかし、金銭以外のもの、例えば現物・経済的利益による収入でも、収入時の時価で収入金額となる。例えば、商品を納入した代金が株式(株券)であった場合には、その株式を受け取った時の株式の価額が収入金額となる。金銭の代わりに車を現物給与として受け取れば車の時価が収入になる。現物はラーメン屋の店主が食べたラーメンなども、収入になるため注意が必要だ(詳細は自家消費を参照)

また、権利という意味では著作権の侵害による損害賠償金も収入になる。これは、著作権が侵害されずに使用料を受け取っていれば得たであろう収入が、損害賠償金として支払われたと考えられるためだ。さらに、たな卸し資産が損害を受けた場合に受け取る保険金、ないしは損害賠償金・見舞金なども収入金額とみなされる。これは売上の代わりに保険金を受け取ったと看做されるためだ。

以上が収入金額についてだが、確定申告などで判断に迷う・困ったことがあれば税理士の無料相談や、無料で利用できる自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)を利用して、誤りのないようにした方が賢明だ。また、計算ミスを防ぐ意味で電卓を叩くのではなく、弥生(やよい)などの青色申告の計算ソフトを利用した方が万全を期せるだろう。