法人化・損益通算・収益構造の変化等で節税(税率・控除・計算など)

株式・投信の売買損益を同一年に処分すると節税になるのは本当か?

所得には事業所得・不動産所得・給与所得・譲渡所得・一時所得など様々な種類があるが、同一の所得であれば黒字と赤字を同一年度内で相殺できる。これを内部通算というが、売却によって損失も確定する反面、所得額が減ることによって節税ができる。

その代表例の1つに株式・投信等の売却する際に発生する譲渡益と譲渡損(黒字と赤字)が挙げられる。この2つは同一年度であれば通算してプラス幅の縮小ないしはマイナス幅の縮小ができる。2016年以降は、株式・投信等の譲渡損と債券の利子所得が損益通算ができることになり節税する幅は広がった。

株式市場では内部通算を「年末にかけての損出し」などと呼んで、一種の風物詩のように捉えているが、本当に株式・投信等の譲渡益と譲渡損の内部通産に節税効果はあるのか?

答えからいえば、確実に節税となるかはケースバイケースだ。正確には節税には見えても譲渡益とのトータルデ考えれば、その後の市場動向によって左右される面があるといえる。まずは下図のベーシックな内部通算による節税効果の説明を見て欲しい。

株式の売買損益の内部通算をした場合の節税額

上図のように譲渡益が100万円で譲渡損が50万円がある場合、年度を跨いで売却すると発生する所得税は約20万円だ。それに対して同一年度に売却すると発生する所得税は約10万円に減るため、トータルの利益で考えれば前者が30万円なのに対して後者は40万円となる。そのため一般的には利益が大きい場合には、損失があるものは売却した方がお得とされている。

しかし、この理屈については株価が1年後も変動しないという前提に立ってのものという点に注意が必要だ。仮に売却せずに保有し続けて、翌年度に株価・基準価額が上昇するようなら同一年度に売却しなかった方が得だったことになる。

そこで同一年度に売却しつつ、損失が出ている株式を買い戻すという手が浮かびあがる。これなら、その後の値上がり益への期待は維持しつつ所得税を軽減できる。ただ、その場合には当然ながら買い戻した株価の動向に左右されることになる。

株式の売買損益の内部通算をして買い戻した場合の節税額

仮に売却と同時に買い戻した株式が多少なりとも値上がりすれば、当然ながら前年度の節税効果と相まって合計の利益は最大化する。上図のケース②は前年度に売却せずに保有し続けた場合だが、この場合と比較しても確実に合計の利益は大きい。

また、この程度の値上がりであれば内部通算せず買い戻さず保有し続けた場合と、買い戻さずに内部通算しただけの場合(実質損切り)と合計利益が同額という点も見逃せない。株価の上げ幅にもよるが、どうしても損切りに踏み出せないのであれば、前年度に内部通算することで得る節税額を超えた段階で、損切りすると決めるのもいいかもしれない。

他方で当然ながら、翌年度に株価・基準価額がさらに下落を続けることも考えられる。その場合には、潔く利益が出た年に損切りで内部通算した方が得となる。このあたりが、個々のケースにおいて本当に内部通算した方がいいのか、さらに買戻しをした方がいいのか、もしくは保有し続けた方がいいのかが分かれるポイントといえる。

以上が株式・投信等の売買損益の内部通算による節税についてだが、確定申告で申告書の作成に悩んだり、納税額の負担や節税などで悩むことがあれば、無料の自治体主催の確定申告相談会(税金セミナー)で直接確認してみたり、税理士の無料相談を利用するのも手だ。