地方債のメリット・デメリットとリスクと税金

地方債のメリット・デメリットとリスクと税金を解説!

地方債は、国ではなく都道府県・市町村などの地方公共団体が発行する債券だ。馴染みがないかもしれないが、個人でも全国型市場公募地方債・住民参加型ミニ地方債などが購入できる。国債よりも信用度は僅かに劣るが国債よりも高利率で、利益という意味では魅力がある。それでは地方債のメリット・デメリットとリスク、そして利益には如何なる税金が課税されるのか?

まずメリットだが、個人向け国債と同様に1万円と少額から購入可能な点と、国ではないが地方自治体である以上は信用度は企業よりも遙かに高い点が挙げられる。少額投資が可能なため余裕資金での投資と分散投資が可能となる。また、地方自治体の破綻は一企業よりも稀なため、債券の価値がゼロになるデフォルト(償還時に元本が戻ってこない)リスクも低い。一応、直近50年の間では1992年の福岡赤池町、2006年の北海道夕張市が財政破綻(財政再建団体)となった事例がある。しかし、それでも企業が破綻するより稀有なケースで、社債よりもリスクは格段に低い。

そして、前述したように国債よりも金利が高いのが最大のメリットといえるだろう。個人向け国債の固定金利3年ものが0.05%、固定金利5年ものも0.05%に対して、地方債で2年ものが0.06%前後、5年もので0.11~0.17%となっている。前者は見た目の金利に差はないように見えるが償還までの期間が1年短く、後者は2~3倍の利率になっている。地方自治体によって利率に差はあれど、魅力的な数字といえよう。

地方債の利率(10年もの地方債・5年もの地方債を個人向け国債との比較表)

上図は平成27年度に募集・発行された地方債の一部だが、都道府県だけでなく政令指定都市(大阪市・千葉市・横浜市・名古屋市・札幌市・福岡市など)でも発行されている。ふるさと納税だけでなく、こういった形で地元貢献するという方法もありそうだ。

他方でデメリットとしては流動性リスクが挙げられる。個人向け国債であれば満期前の中途売却する際には国が買い取る仕組みがある。しかし、そのような仕組みは地方債ではなく(自治体によっては買い取ってくれるかもしれないが)、いつでも自由に売却することはできない。もちろん、地方公共団体が買い取らなくても証券会社・銀行などが買い取ってくる可能性はある。だが、彼らからしても転売が容易ではなく、自社でリスクを負うわけにもいかないため、彼らに売却すると思った以上に安く買い取られる(買い叩かれる)可能性がある。国債以上に満期まで保有するのが重要となる。

基本的に利益が出るため税金も気になるところだが、地方債の利子で得た利益は利子所得として課税される。ただし、特定口座であれば利払い時(利子を受け取る際)に約20%分の税金が差し引かれる。そのため特定口座であれば確定申告は不要となる。他方で特定口座ではなく一般口座だと申告分離課税となり確定申告が必要になる。利子分が差し引かれて発行される割引債は、満期の償還時に利益が出てくるが、その場合も同様だ。

2016年以降の公社債と公社債投信の課税関係(所得・申告・損益通算など)と変更点

また、債券のため「マル優制度」で、障害者等に該当する人( 遺族年金を受けている妻※母子家庭など、身体障害者手帳の交付を受けている人など)は、合計額が350万円までの国債の利子は非課税となる。さらに利子所得の源泉分離課税制度により、どれだけ公社債の利子で収入があろうとも、配偶者控除の対象からは外れない。預貯金の利子と同様に38万円以下の括りの中から利子所得は除かれるためだ。配偶者控除が気になる人は検討の余地ありだ。

以上のように地方債はメリットもあるが、一点デメリットもあるため注意したい。税金に関しては2016年から現行の制度になり、今後の改正の予定は無い(というか改正する余地が無い)ため注意点は少ない。とはいえ、何かしら間違いがあると後々が面倒なため、不安なら最寄の税理士に無料相談するか、税理士主催の無料の相談会や各自治体が催す無料の税金セミナーに行って確認してもいいだろう。