原状回復・リフォームの費用削減等のポイント

そもそも原状回復とは何か?今後の負担増への対策はあるか?

アパート経営などの不動産投資では、退去者が出るのは止むを得ないことだが、退去後の原状回復については未だにトラブルが絶えない。それでは、そもそも原状回復とはどういったもので、不動産オーナーは今後の対策として何を考えればいいのか?

まず、原状回復についてだが、国土交通省のガイドラインによると原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされている。経年劣化や通常の使用による損傷は賃料に含まれ、さらに貸借人が貸借開始前に戻すことではないと記載された。

原状回復の損耗・既存の区分(賃貸人・賃借人・建物価値)

噛み砕けば、原状回復の原状とは「部屋の中の荷物・設備を撤去して、部屋に加えられた変更を戻した状態」であり、部屋の中に何も無い状態でしかないということだ。誤解されがちな「入居前と同じまっさらで綺麗な状態」ではない。通常の生活における壁紙クロスの汚れや日焼けによる変色や家電後部の黒ずみ・電気ヤケなどはオーナー負担となる(詳細は原状回復のオーナー負担と入居者負担を参照)

このことは、「入居者が長く住んで汚れがひどくてもオーナー負担の部分はオーナー負担」という事実も浮かび上がってくる。つまりは、入居から2年と10年では壁紙クロスの汚れなども酷くなるが、オーナー負担の部分はオーナー負担ということだ。入居年数が長いからといって、入居者に請求できる原状回復の費用は増えないことになる。この点も誤解されがちなため注意が必要だ(耐用年数・経過年数も参照)

かなり大家・不動産オーナーに不評を買ったガイドラインだったが、2004年に東京ルールと呼ばれる退去時の敷金精算のガイドラインが施行されたことで、ガイドラインに対する考え方も現在では浸透しつつある。下図は東京都の敷金の相場だが、明らかに東京ルールが施行された後は敷金の月数が減っている。

一都三県の敷金の月数の推移チャート

今までの経緯から、今後も賃借人に有利になる流れは止まらないことが予想されるが、それでは大家・オーナーは原状回復をどう考え、その費用をどう抑えるべきか? まず考えられるのは安い業者を探すという手だが、これには地域差もあるが限界もある。そこでクロスの張替え・清掃などをオーナー自ら実施するという荒業だ。壁紙クロスの張替えは難しいように思うかもしれないが、最近では日曜大工の道具で実施している人もいる。おおよそ20平方メートルの壁で素人でも2~3時間で作業は完了する。初めは苦戦するかもしれないが、時間があるなら挑戦してみる価値はある。

そこまでの時間が無いなら、新しい入居者の入居時にオーナー自ら立ち会ったり、細かい注意事項を説明して予防線を張るといった方法もある。そのオーナーが物件のエントランスを毎朝掃除していれば、さらに入居者へ顔を覚えてもらうことになろう。入居者に「部屋は借り物だ」という意識を不断に植え付けられれば一定の効果があるだろう。それも難しいようなら、定期的に使い捨ての掃除グッズを入居者にプレゼントするという手もある。大掃除の時期にでもスポンジ・雑巾・壁紙クリーナーを始め、エアコンクリーナーでエアコンを掃除してもらえればエアコンの故障防止にもなる。1人あたり数千円の出費で、何人かが綺麗に使って原状回復の費用が浮けば儲けものだ。

また、可能な限り退去者を出さないという原点に立ち戻るのも良いだろう。入居者が2~3年の間隔で移り変わるサイクルを、4~6年に変えるだけで原状回復の回数が減るため費用は安く済む。そもそも物件が魅力的であれば問題はないが、そうも言っていられない物件もあるだろう。そういった場合には入居から何年経過で家賃を値下げするサービスや、商品券のプレゼントなどが考えられる。物件の入居者に学生が多いと厳しいかもしれないが、試してみる価値はあるだろう。

以上が原状回復と今後の対策についてだが、いずれの策も必ずしも成功するとは限らない。とはいえ、賃借人の保護という流れに身を任せて、ただキャッシュフローを悪化させるよりはマシだ。大規模なリフォーム・リノベーションで当面の原状回復費用を浮かせる手もあるが、リスクが高い手よりはリスクが低い手を一通り試してからでも遅くはない。また、不動産投資の答えは1つではないため、インターネット・書籍などの情報だけでなく、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して同業者の意見を得るのも手だ。