不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

人口動態で有利な東京・神奈川でも空室率は高く、さらに将来には!

アパート経営などの不動産投資では、人口動態で有利な東京・神奈川などの投資物件・収益物件がオススメなどと言われている。ただ、人口動態で有利な東京といえども、2025年には人口が横ばいになると予想されていることは誰も語らない。さらに、空室率を見ると不動産会社が語らない不都合な事実が浮かび上がってくる。

まず、下図の日本賃貸住宅管理協会の入居率のデータを見て欲しい。首都圏で約91%、関西圏で約92%、全国平均で約91%となっている。空室率でいえば8~9%程度といったところになる。他方で、ホームズ調べ賃貸用住宅の空室率データでは東京の空室率は14%、神奈川で16%、大阪で20%となっている。

日本賃貸住宅管理教会協会の入居率データ ホームズ調べの空室率(東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・京都・兵庫・奈良)

どちらが正しいのか?と考えてしまうが、協会のデータは協会に登録されている企業からのヒアリングで、ホームズのデータは独自調査での結果だ。そのため、どちらも事実といえるだろう。このことから空室率は、首都圏でも良くて8%、悪ければ15~20%と考えるしかないだろう。

この結果を受けて、不動産投資の収支計画で入居率80%(空室率20%)で計算すれば問題ないのでは?とも考えられる。しかし、あくまで数字は平均でしかなく、東京都内でも中野区や墨田区の空室率は平均を下回る約10%であるのに対して、目黒区の28%や千代田区の36%と平均を大きく超える数字になっている地区もある。地域ごとの特性を考えなければ、東京といえども空室が埋まらない可能性を孕んでいる。

さらに悪いデータとして、今後も空室率は上昇する可能性が高い点を忘れてはならない。下図は野村総合研究所(野村総研)の「住宅着工数シナリオ別の空家率の推移」だが、住宅の着工件数が原状維持であれば、2040年には空家率が40%になると予想している。仮に住宅の着工件数が原状より30%近く減少すれば、空家率は30%も切るようだが、その可能性は考えにくいだろう。そもそも1978年(昭和48年)から1990年代と人口が微増していた時期でも、空き家率は上昇している。趨勢として空家率が上昇する流れにあるのは間違いない。

空家率の将来予測(2040年まで) 空き家に占める賃貸用住宅の割合

もちろん空家率が増加するからといって、必ずしも賃貸住宅の空室率が上昇するとは限らない。しかし、総務省の調査では空き家のうち賃貸用住宅が52%を占めるという結果になっており、空家率と賃貸住宅の空室率が無関係とは言い難い。住宅供給の中には必ず賃貸住宅が少なからず含まれていることも忘れてはならない。さらに、間違いなく相続などを含めて家を持て余す人が増えるのは確かで、何人かが賃貸から相続した家に移り住むことも考えれば、多少なりとも空室率が上昇するのは間違いないだろう。

一般的に入居率は、途中に大規模なリフォーム・リノベーションを挟まなければ、新築であれば95~100%と満室に近いが、10年後には80~85%、20年後には70~75%になると言われている。これに、今後予測される空室率の上昇分(5~10%?)を加味すれば、20年後の入居率は60~70%になる可能性がある。入居率60%で不動産経営が成立するのか?と問われれば、答えは考えるまでもないだろう。

以上が不動産会社が語らない空室率についてだが、空室率と将来予測から考えて今から不動産経営に乗り出すには、相当の覚悟と工夫が必要になるだろう。いっそのこと諦めてしまうのも手だ。どうしても諦めきれない人は、建物に相当の工夫をするか、FP・銀行と綿密な計画(金利や借入期間を調整)を立てるしかない。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・経験談で打開の糸口を探すのも1つの手だ。