不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

原状回復費用のオーナー負担は年々増えている!?

アパート経営・不動産投資では、退去者が出た際の原状回復は避けられない。それも昨今では敷金返還に伴う原状回復の費用負担が賃借人に有利に動いており、不動産経営を考えるうえでは悩みの種の1つになっている(詳細は原状回復とは何か?を参照)東京ルールなどの浸透によって、徐々に落ち着きを取り戻しつつあるが、実際に不動産オーナーの原状回復の費用負担は増えているのか?

まず現状の原状回復の費用についてだが、概ね10万円以内が20~30%を占めており、10~20万円以内を含めると50%を超えてくる。基本的には原状回復は壁紙クロスの張替えとクリーニング費用で済むため、概ね納得の数字といえるのではないだろうか。

原状回復の費用の割合

ただし、これはあくまで原状の費用であり、今後のことを保証するものではない。冒頭でも記述したように原状回復の費用は不動産オーナーに不利な方向に動いている。それも入居者の居住期間は短くなる傾向にある。さらに、昨今の政府・日銀のインフレ政策や円安に伴う原材料費の高騰も費用負担増になる一因になる可能性がある。

しかし、原状回復の費用を時系列に並べたデータは存在しない。そのため現場の不動産オーナーが、昨年よりも費用負担が増えたかと感じているか否かで方向性を考えるしかない。下図の日本賃貸住宅管理協会の「原状回復費用のオーナー負担額の割合」に関するデータを見て欲しい。

原状回復費用のオーナー負担額の割合の2013年と2015年の比較

2013年は既に東京ルールや原状回復のガイドラインが施行されているが、その段階で前年よりもオーナー負担が増えていると回答した人が13%、やや増えていると回答した人が46%を占めている。それが2年後の2015年になると、オーナー負担が増えていると回答した人が19%まで上昇し、やや増えたと回答した人が40%を占めている。

このデータからすると、ここ数年は原状回復に占めるオーナー負担が増えており、それは如実にオーナーが感じ取るレベルまで来ているということだ。対して、オーナー負担が減ったといっている人は1~5%を上下するだけとなっている。いきなり来年から原状回復の費用負担が減ったという人が爆発的に増加することは考えにくいことから、やはり今後も原状回復のオーナー負担は増え、それも如実にアパート経営の大きな負担になるという将来像は容易に想像がつく。

以上が不動産会社が語らない原状回復の費用負担についてだが、これを受けて不動産投資を諦めて、他の投資や相続対策にするのもいいだろう。どうしても諦めきれない人は、建物に相当の工夫をするか、居住期間を短くする何かしらの策を講じる必要がる。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・経験談で打開の糸口を探すのも1つの手かもしれない。