不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

家賃相場の推移からみた大家が賃料を上げられる可能性!?

アパート経営・不動産投資では、建物の老朽化に伴いリフォーム・リノベーションをすれば当然ながら賃料を上げても、入居者が集まる可能性は高い。しかし、俗に言う人口増・景気拡大(好景気)を理由にした賃料増額は大家はできるのだろうか。

まず、法律的な観点からいえば借地借家法に「租税負担の増減や経済事情の変動、近隣の家賃と比べて不相当な場合に賃料の増額や減額の請求ができる」との規定があるため可能ではある。しかし、借主が了承しなければ裁判になる可能性が高い。そのため、実際には退去した次の入居者に向けて賃料を増額することになる。

さて、物件の改修以外で賃料を増額できる要因として、まず考えられるのは冒頭でも記述した人口増だが、人口動態から考えて東京でも厳しく、世帯数増も止まる気配があり、当然ながら少子化も進んでいるため非常に厳しい。それを期待するぐらいなら突発的な事象、例えば東京五輪開催や東京スカイツリー開業などによる、局所的な人気上昇による賃料増額を期待した方がいいだろう。

それでは、景気拡大を理由にして賃料を増額できるのか? 下図は東京カンティ調べのマンション賃料の推移だが、2007年あたりの「いざなみ景気(かげろう景気)」の際には確かに主要な都市では賃料が上昇している。もちろん、その後のリーマンショックで家賃は元の水準どころか、それ以下になるのだが。。。

日本の主要都市(東京23区・横浜市・千葉市・さいたま市・大阪市・神戸市・名古屋市)におけるマンション家賃・賃料相場の推移

また、昨今のアベノミクス+日銀金融緩和でも家賃相場は上昇している。都市によってバラつきがあり、なぜか神戸・さいたまの平均賃料は微減しているが、概ね上昇していると言って差し支えはないだろう。

以上のことから、景気拡大(好景気時)には賃料を値上げできると考えられそうではある。しかし、この詳細を見ていくと、物件によっては値上げできない可能性も見えてくる。下図は公益財団法人不動産流通推進センターの「東京都内の賃貸マンションの間取り別の賃料推移」だが、2007年(平成19年)あたりの好景気時でも間取りが1LDK~2DKの物件の賃料が上がっていない。

東京圏の賃貸マンションの家賃相場の推移

1LDK~2DKの物件は、2007年(平成19年)時に上昇しなかった後は、2010年に突発的に上昇したのを除けば右肩下がりになっている。現在では2005年時よりも平均家賃で約2%下落している。他方で、ワンルームと2LDK・3DKは前述のマンション賃料動向のグラフ通りに景気で波打っているのが分かる。過去の傾向からすれば、1LDK~2DKの物件は賃料の値上げがしにくいことになる。

以上が家賃相場の推移と家賃値上げについてだが、不動産投資で物件を取得する際には賃料・利回りからワンルームではない物件を取得しがちだが、過去の傾向からすれば家賃の値上げが見込めない可能性を考慮しておく必要がある。逆に、ワンルーム・2LDK以上の物件となると景気変動の影響を受けやすく、容易に家賃を値下げする余地が出てくるともいえる。