不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

人口減でも世帯数増だから不動産投資は安泰という考えは間違い!?

アパート経営などの不動産投資では、人口動態で有利な東京・神奈川などの投資物件・収益物件がオススメなどと言われている。ただ、人口動態で有利な東京といえども、2025年には人口が横ばいになると予想されていることは誰も語らない。また、日本では人口減少・少子化が進んでいるが、これに対して世帯数が増加しているから大丈夫!という反論もある。ただ、この世帯数の増加という点にも不動産会社が語らない不都合な事実がある。

下図は厚生労働省の世帯状況のデータだが、確かに1953年から現在まで世帯数は伸びている。このデータから不動産会社は「人口が減少しても世帯数が増えれば、入居者の数は減らない」と言うことがある。

日本の世帯数の推移チャート

さらに世帯増と共に平均世帯人員数が減少がしていることも分かる。昔のように4人1家族であった世帯が、単身者・母子家庭・父子家庭・独居老人の増加によって、賃貸を欲する単位が細分化・個別化しているといえよう。未婚者が増えれば、結婚すれば1つだった住居への需要が、単身者×2で住居への需要が2つになる。さらにファミリー向けの広い物件ではなく、単身者向けのワンルーム・1DKの需要が増えるとも考えられる。そのため賃貸に対する需要は減らず、不動産投資で多いワンルーム・1DKの物件への需要は維持される、と言えなくもない。

しかし、ありとあらゆる事に通じることだが、過去数十年続いた傾向が必ずしも今後も続く保証は無い。下図は国立社会保障・人口問題研究所の世帯数の将来推計だが、2020年をピークに世帯数の増加は止まり減少し始めると予想している。平均世帯人員も2035年までに2.2人まで減少するが、2020年辺りから緩やかな下落になると予想していることも影響している。

世帯数の将来予測

つまりは4人1世帯が個々人で別居するからといって、それで圧倒的に進む人口減・少子化を止められないということだ。また、極論を言えば1人で2つの物件を借りるのが主流とならない限り、世帯数が細分化されても最小単位である1人まで行き着けば世帯数の増加は止まるともいえよう。世帯増による入居者の需要増という理屈には限界があり、それは間近に迫っていることが分かる(世帯数がピークを打てば不動産会社は、この理屈を言わなくなるかもしれないが)

そして当然ながら、入居者の需要が減退するなら、不動産賃貸のオーナーとしては需要減をカバーするために物件のリフォーム・リノベーションか賃料の値下げしか選択肢は無い。前者であれば短期的には解決してもリフォームを繰り返す堂々巡りになる可能性があり、後者であれば値引き合戦に巻き込まれることになる。どちらにしても茨の道が待っているといえよう。

以上が不動産会社が語らない世帯数の増加についてだが、世帯数と将来予測から考えて今から不動産経営に乗り出すには、相当の覚悟と工夫が必要になるだろう。いっそのこと諦めてしまうのも手だ。どうしても諦めきれない人は、不動産会社と建物に相当の工夫をするか、FP・銀行と綿密な計画(借入金・貸付期間など)を立てるしかない。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・経験談で打開の糸口を探すのも1つの手だろう。