不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

湾岸地域・埋立地の液状化は不動産投資の大きなリスク!?

アパート経営などの不動産投資には様々なリスクがあるが、不動産を直接保有して収益をあげるアパート経営では、天災は最大のリスク・ネックとなる。台風・豪雨・河川氾濫なども恐ろしいが、その規模からすれば地震は天災の中でも最大のネックとなろう。

地震そのものについては耐震性の強化などの対応策ができるが、地盤の液状化現象は対策が非常に打ちにくい。先般の東日本大震災で液状化が話題になった浦安市は、8700棟の住宅が被害を受けて、建物が傾いたり倒壊している。その浦安市でさえ、地盤の液状化対策が進んでいない。

浦安市の液状化現象

もちろん液状化対策が進んでいないのは、技術的な側面よりも費用負担が地域住民に課されており、その負担ができない高齢者がいることが原因ではある。その点、これから不動産投資をする人は自分の収益物件だけ液状化対策を施せばいいと思うかもしれない。それは間違いではないのだが、周囲・街全体が液状化されている地域に住みたいと思うだろうか・・・? 液状化前まで賃貸物件に住んでいた人は、契約期間は住んでくれるかもしないが、間もなく退去するだろう。次の入居者が見つかりにくくなり、空室率が目に見えて上昇する可能性は十二分にある。現に浦安市は震災直後の数年は転出超過となり、人口が減少している。

また、この液状化を受けて浦安市民が不動産会社に裁判を起こしたが敗訴している(現段階では1審のみ)も見逃せない。これは不動産会社が液状化が当初は予見できなかった、故意・過失はなかったということを示している。液状化が懸念される地域は後述するが、もしも範囲外であれば、被害を不動産会社との裁判で取り戻すことはできない可能性がある。

そう考えると最後の予防線、最後に頼ることになるのは地震保険だ。地震保険に加入していれば、もちろん地震で全壊すれば100%が補償される。ただし、半壊であれば建物の時価の50%の補償に留まり、一部損であれば5%しか補償されない。仮に地震+液状化によって建物が傾いたとしても、その程度であれば5%しか補償されない可能性もある。当然ながら傾いている物件に人が住むわけもない。また、半壊で50%の補償を受けてもローン残債が50%以上残っていれば、それで不動産経営は終わりというシナリオもある。

それでは、そもそも液状化現象の原因となる大地震は、今後も発生するのだろうか? それについては次に日本を襲う大地震は?を参照して欲しいが、概ね南海トラフ沖地震と首都直下型地震が上げられる。特に不動産投資では人口動態が有利な東京への傾倒が進んでおり、首都直下型地震となれば、東日本大震災よりも液状化による被害が広がる可能性が高い。それでは東京のどこに液状化の可能性があるのだろうか?

内閣府の東京都の液状化マップ 東京都土木技術支援センターの東京液状化マップ

上図は、内閣府の東京湾北部での地震が起きた場合の、揺れ・液状化による全壊する建物の分布図と、東京都土木技術支援センターの東京液状化マップだ。前者は東京湾北部という設定もあるが、湾岸部と東京の東部で建物の全壊が予想されている。これは東日本大震災で液状化が騒がれた地域と合致する。

他方で後者のマップは、地質によって液状化が起きる場所を予想されている。特に液状化が懸念されるのは青色の低地と呼ばれる地域で、これは内閣府と同じく東京東部となっている。しかし、紫色の河谷底も液状化の検討地域とされている。こちらは東京中を人間の血管のように張り巡らされており、新宿区・渋谷区・中野区・杉並区などにもある。この網の目をかいくぐった場所の物件でないと、液状化の不安は少なからずある。

以上が不動産会社が語らない液状化についてだが、人口動態が有利だからといっても東京には地震・液状化のリスクがあるのは間違いない。別の場所の物件にするという手もあるが、不動産投資をいっそのこと諦めてしまうのも手だ。どうしても諦めきれない人は、場所・建物に相当の工夫をするしかないだろう。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・考え方を聞くのも1つの手だ。