不動産会社が語らぬ不動産投資に不都合な事実

首都圏では平均居住期間が短くなっており不動産投資にマイナス!?

アパート経営・不動産投資は、退去者が出ないことが賃料収入の安定に繋がる。入居者の平均居住期間が長ければ賃料収入の安定化は元より、空室期間の短期化・原状回復の負担減・募集費用の削減が見込める。そのため不動産オーナーとしては、入居者の平均居住期間(平均入居期間)は長いに越したことはない。それでは、昨今の平均居住期間は何年ぐらいなのだろうか?

下図は日本賃貸住宅管理協会の平均居住期間の、2010年・2013年・2014年のデータだ。これを見ると平均居住期間が変動しているのが分かる。特に大きく伸びているのが65歳以上の高齢者の平均居住期間で、同一の物件に入居している年数が6年を超える人が年々増加している。

全国の賃貸住宅の平均居住期間の推移

また、賃貸物件の主たるターゲットである学生を除いた一般単身者で、2014年こそ減ったが居住期間4~6年の割合が増えている。他方で、ファミリー層は居住期間4~6年の割合が増えているものの、代わりに6年以上の割合が減っている。総じて考えれば、ファミリー層の居住期間は短くなりつつあるといえそうだ。

ただし、上図は全国的なデータでしかない。地域によって状況が若干異なる。特に首都圏と関西圏では傾向が異なる。下図は同じく平均居住期間だが、首都圏・関西圏・その他の地域に分けた場合のデータだ。

全国の賃貸住宅の平均居住期間の推移

まず首都圏についてだが、全国データと異なり一般単身者の居住期間4~6年の割合が減っており、さらに6年以上の割合も減っている。一般単身者の居住期間は短期化の傾向にあるといえる。また、関西圏では全国データと異なり、ファミリー層の居住期間6年以上の割合が上昇している。関西圏ではファミリー層の居住期間が長期化の傾向にあるといえる。関西圏においては、高齢者の居住期間の長期化の傾向が全国平均・首都圏よりも大きな伸びを示しているのも見逃せない。

これらのデータからすると、まず単身者の居住期間が全国的に長くなっている点は賃貸経営にはポジティブに捉えられる。ただし、首都圏では逆の傾向にあり賃貸経営にはネガティブ材料といえる。景気動向による影響もあるかもしれないが、今後は首都圏の賃貸物件の出入りが激化する可能性を不動産オーナーは考える必要があるかもしれない。

また、居住期間が年々伸びている65歳以上の高齢者についてだが、こちらは不動産オーナーには一長一短といえる。前述したように居住期間が長い点はプラスに働くが、65歳以上で6年以上の居住期間となると高齢化による弊害が高まる。この場合には家賃滞納よりも孤独死・認知症によるトラブルを考えておかねばならない。サ高住のオーナーは元より、高齢者へも広く賃貸を開放しているなら、6年以上は住む可能性が高いことを考えて対応・対策を講じておく必要があろう。

以上が不動産会社が語らない平均居住期間だが、これを受けて不動産投資を諦めて、他の投資や相続対策にするのもいいだろう。どうしても諦めきれない人は、建物に相当の工夫をするか、FP・銀行と綿密な計画(金利や借入期間を調整)を立てるしかない。また、不動産会社の不動産相談会(不動産投資セミナー)などを利用して、同業者の意見・経験談で打開の糸口を探すのも1つの手かもしれない。