不動産の有効活用と賃貸借

不動産管理会社の設立で節税できるメリットがあるが!?

アパート・マンション経営といった不動産投資において、多少のリターンは犠牲になるが専門家のいる不動産管理会社に日々の業務を任せて、日々の賃貸管理業務の手間を省く傾向が強い。その一方で、不動産管理会社を設立することで節税になる側面もあり、それを目的に不動産管理会社を設立する人も多い。それでは、如何にして不動産管理会社を設立して節税できるのだろうか?

まず不動産管理会社の設立で大きいメリットになるのが、賃料収入(不動産所得)を役員給与などの給与所得にして給与所得控除を利用して節税できる点がある。例えば、A不動産を父名義、B不動産を母名義、C不動産を・・・と分けるよりは、不動産管理会社の役員に名を連ねて給料を支払った方が税金面では有利ということだ。

不動産管理会社による税負担の軽減

これは不動産所得は賃料収入から経費を差し引いた額に所得税が課税されるが、給与であれば給与所得控除を差し引いた額に所得税が課税される。具体的には、経費を差し引いて500万円の不動産所得があれば、500万円に20%の税率をかけた100万円から、約43万円の控除を差し引いた約57万円が所得税として徴収される。

2015年以降の所得税率

他方で、500万円が給与となると500万円から100万円(収入の20%)と54万円の給与所得控除が受けられ、給与所得は約350万円となる。これに税率20%をかけた75万円から控除の43万円を差し引いた約32万円が所得税として徴収されることになる。

2013年以降の給与所得控除

前述の計算だと20万円程度の節税(手取りの増加)が見込めるわけだが、不動産管理会社の役員にする親族が、別の会社(本業)で給与を得ていたり所得があると、その人の所得の合計額が大きくなる。その結果、想定しているよりは小額の節税になる可能性もある。不動産管理会社を設立する目安は2000万円とするのが通説だが、保有する不動産などによってケースバイケースで数字は変動する。本当に不動産管理会社を設立した方が得なのかは銀行・FP(ファイナンシャルプランナー)や、税理士に相談した方が賢明だ。

また、不動産管理会社を利用して節税する場合、不動産会社に支払う管理料や転貸料が高額になるほどに支払われる給与が大きくなり、結果的に節税効果は大きくなる。しかし、昭和の頃より不動産管理会社による税回避の動きが頻発したため、悪質な同族会社による租税回避に対して規定を設けている。不当な管理料・転貸料・給与は、損金への算入を認められなかったり、国税庁から行為計算の否認(計算のやり直し)となる。

この点、自分だけは大丈夫と思いがちだが、不動産管理会社による節税は前述したように昭和の頃よりある方法で、特に目新しいものではない。当然ながら国税庁も目を光らせている自事項であり、不動産管理会社を設立した時点で目をつけられていると考えた方が無難だ。そのため適正な水準の管理料・転貸料・給与などを遵守することが重要だ。

以上が不動産管理会社による節税効果だが、様々な注意点も記述したが節税の効果があるのは間違いない。所得税だけでなく相続税の対策にもなるため、不動産の規模によっては併せて意識したいところだ。また、適正な水準などは地域などにもよるため、不明点があれば税理士の無料相談や、各都道府県が主催する無料の不動産投資セミナー・税金相談会などに参加して相談するのも悪くないだろう。