不動産売買・賃貸借の留意点/注意点

その賃貸借契約、定期借家契約で大丈夫ですか!?

一軒家は元より、マンション・アパートでも賃貸をする際には、まず賃貸借契約を結ぶことになる。ただ、賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約の2つがあり、これをスルーすると後で痛い目を見るため注意が必要だ。それでは両者に、どのような違いがあり、かつ何に注意すればいいのか?

まず普通借家契約だが、イメージとして定期借家契約よりも権利が強いと考えればいい。一番大きいのが仮に賃貸中に貸主から退去を要求されても、正当事由がなければ退去しなくてもいい点だ。正当事由は厳しく、貸主が建物を壊して更地にしたいというだけでは認められず、借主が周囲に迷惑をかけていても正当事由とならないことが多い。また、賃貸契約は永久に更新が可能で、借主が周囲の物件よりも家賃が高い等の理由で、貸主に家賃の減額を要求できる借賃増減請求権もある。

他方の定期借家契約は、まず賃貸の期間が決まっている点が大きい。期間は概ね2~3年が多く、更新ができないため2~3年後には退去するのが前提となる。ただ、2~3年後に再契約という形で住み続けることは可能だ。更新と再契約で何が違うのかというと、更新は前述したように貸主は拒絶が基本的にできない。一方の再契約は拒絶(再契約しない)が可能ということだ。マンションオーナーがマンションを更地にして現金化したい場合や、前述のような住民トラブルを起こした人は再契約されない可能性が十分にある。後者は理不尽に思うかもしれないが、入居に際しての審査基準が変わりました、とでも何とでも理由は付けられる。

また、賃料を交渉できる借賃増減請求権も定期借家契約には存在しない。正確には契約書に特約を付ければ借賃増減請求権を排除できる。長々と説明される賃貸契約の説明の中で、その箇所だけでも注目してみるのもいいだろう。以上のポイントを総括した下図の普通借家と定期借家の比較表を参照して欲しい。

普通借家契約と定期借家契約の比較一覧表(契約法・契約期間・中途解約・更新・更新料・契約満了通知・借賃増減請求権)

中途解約については、いずれも期間内は基本的に不可だが、中途解約特約が契約書に盛り込まれていれば可能だ。定期借家契約の解約では中途解約の特約がなくとも、借りている住居の床面積が200平方メートル以下の物件なら、転勤・介護などの止むを得ない事情で中途解約ができる。定期借家で一定期間といっても過剰に中途解約を恐れる必要はない。ただ、当然ながら違約金などが発生する可能性は否定できない。

また、更新については普通借家契約では更新料があるケースがあるが、定期借家契約だと更新という概念が無いため更新料は存在しない。ただ、再契約手数料などといった名目で要求される可能性はある。更新料は判例上は認められたが、不動産業界では消えつつある慣習ではある。更新料にかこつけた再契約料があり、それを許容できないようなら契約時に交渉するのもいいだろう。

以上が普通借家と定期借家の違いだが、これだけ見ると特に定期借家にメリットが無いように見える。実際問題、不動産について少なからず知識があると定期借家と聞くと眉をひそめる人もいる。ただ、定期借家には礼金・敷金で有利な物件も多く、定期借家という条件を跳ね返す魅力的な物件も出てきている。そう考えれば、定期借家の注意点を抑えて、あくまで物件の中身と賃料で物件探しをするのが妥当といえる。