生命保険 解説・用語集

保険会社を選ぶ基準とリスク

保険契約者・保険を検討する人が保険会社を選ぶ基準は、「会社規模」「ソルベンシーマージン」「国内or外資」と契約者自身の「預貯金」の4点と考えられる。もちろん保険商品そのものが第一だが、可能であれば基準をクリアした保険会社から適正な保険を選ぶことをオススメする。

まず「会社規模」は一定程度あり、少額短期保険業者(ミニ保険)は可能な限り利用しないか補助に回すことが望ましい。保険には政府のセーフティネットがあるため、生命保険契約者保護機構が保険会社が破綻しても契約者は保険金が受け取れる仕組みになっている。それでも解約返戻金の一時的な制限や減額という措置はありうるため万全ではない。その一方、少額短期保険業者はセーフティネットの対象外となっている。そのため極力は利用しない方が、無駄にリスクを増やすことを避けられる。

また、保険会社は異常な事故(地震など)による保険金の突発的な増加の他に、資産の運用リスクも抱えている。アメリカのAIGグループがサブプライム問題(リーマンショック)時に経営危機となり米国政府が支援をしているように、日本でも日産生命・東京生命を救済している事例がある。りそな銀行が国有化されたように、金融関連の企業が危機になった場合は規模が大きいほどに、国民への影響を鑑みて公的資金という名の税金が注入される可能性が高まる。中小の保険会社や少額短期保険業者では、マスコミが過度に騒がない限りは政府は動かない可能性がある。万が一を考えれば、会社規模は大きいに越したことはない。注意したいのは知名度ではなく規模である点で、社名を知っているからといって規模が大きいとは限らない。

次に「ソルベンシーマージン比率」だが、ソルベンシーマージン比率とは保険会社の保険金支払い能力を数値化したものだ。この数値が高い方が、通常想定するリスクを超える過大なリスクに対して、十分な支払い能力があることになる。自己資本によって左右される数値のため、会社規模やシェア・契約数とソルベンシーマージンは直結しない。ちなみに日本生命やアフラックはソルベンシーマージンは低い。大地震などでも保険金をスムーズに受け取るために、この数値やランキングはチェックする必要がある。

また「国内企業or外資企業」という点も把握しておきたいところだ。前述の会社規模でも記述したが、天災・経営危機に陥った際に外資系企業の場合には日本政府が支援するかは微妙なためだ。天災だと支援の可能性はあるかもしれないが、本国の本社が経営危機となっても日本は動かない。また、その場合には日本を撤退する可能性が高い。前述のAIGは日本を撤退する際に他社の保険会社へ売却(業務移管)となったが、経済情勢・他社の経営状況によっては買い手が見つからない可能性もある。その場合には、保険契約者にはおざなりな対応して、とっとと撤退する可能性も否定はできない(撤退する側からすれば撤退する市場での評判がどうなろうと関係ない)。可能性は相当に低いかもしれないが、頭の片隅に入れておいても損はない。

最後に「預貯金」があるかも確認する必要がある。直接的に保険が抱えるリスクではないが、同時多発的な事故が起きた場合に不確定要素である他者(保険会社など)への依存度を下げておくという意味で価値がある。天災や死亡といったリスクに備えるのが保険ではあるが、地震や火事といった天災で家・家財を無くし、家族(特に給与所得者)が死亡すれば、保険金を受け取るまでの家族の生活は困窮する。さらに単発の事故だとしても保険会社が支払いを渋れば、それを補う当面の金銭が必要になる。つまりは何が起きても、保険会社に頼らずに数ヶ月は十分に生活できる金銭は用意しておくことが、保険を超えて最大の備えになるということだ。

以上の3点の基準で保険会社を選択し、1点の自分自身の状況を把握・確認しておけば、保険会社選びと保険加入前の前提条件は完璧だろう。もちろんソルベンシーマージンなどの数値は変動するため、数年に1回は見直す必要があるが、それでも契約手時点では万全だ。ただし、如何に保険会社というリスクを軽減しても、契約する保険がイマイチだと意味がないため、保険商品そのものにも十分な検討が必要なのは言うまでもない。