生命保険 解説・用語集

女性保険は本当に必要か?

女性保険は本当に必要か?を考える前に、そもそも女性保険というものは存在しない点を抑えておきたい。正確には医療保険に女性疾病特約を付加して保障を手厚くした保険や、同じくがん保険に女性疾病特約を付加して保障を厚くした保険、定期保険に女性向けの医療特約を付加した保険などが女性保険と呼ばれている。

具体的には、女性ならではの病気(子宮がんなど)になると入院1日あたりで受け取れる給付金が上乗せされるなどが、典型的な女性保険の内容だ。そのため特約が無い医療保険を契約していても、医療費の補完という目的(大抵のがん保険は乳ガンも保障対象)は達成できるということだ。

ただし、女性保険ならではのメリットがある場合もある。例えば帝王切開はノーマルな医療保険では保障の対象外となるが、一部の女性保険は保障の対象としている。また、がんといっても乳がんの場合には、がんを切除する際に乳房を切除するため術後の乳房再建の必要性が出てくる。2013年から健康保険が適用されるようになったが、それでも数万~数十万円の費用負担が発生する。その際にはインプラントにするか自家組織による再建にするかなど選択肢があるが、自分の体に関わることだけに費用をケチって選択するということは考えられない。言い方を変えれば、よりよい再建方法が今後出現して、その方法が保険適用されず多額な費用だった際に、普通は諦めたくない人が多いということだ

その意味で、医療保険がん保険とは異なり、保険金が過剰ともとれる額でも必要性が無いとは言えない。もちろん女性保険でも、生活費・教育費などとは別に数百万程度の貯金があるなら女性保険は不要だ。高額療養費制度を利用すれば大抵の病気は貯金で事足りるためだ。

ただし、可能性を考慮していけば数百万で足りるかは微妙だ。がん保険・医療保険などと同じく長期通院となった場合や、女性特有の懸念もある。例えば、子宮頚がんは初期であれば治療後も妊娠は可能とされているが、仮に妊娠が厳しくなった場合には人工授精・代理母出産などを考える人もいるだろう。代理母出産だと1,000万円から数千万円になる可能性がある。入院日額で1万円程度の女性保険ではカバーし切れるものではないが、一時金で100万円を給付するような保険なら一助にはなろう。

視点を変えて、女性特有の病気になる確率は高いのだろうか。全ての病気を集計するのは困難のため、がんを例にとってみる。

ガンの部位別罹患比率

上図は国立がん研究センターの「がんになった人の部位別の比率」だが、パーセンテージにすると女性でがんになった人の約20%は乳がん、約7%が子宮がんということになる。がんになる人の4人に1人程度は、女性保険の上乗せ対象になると考えれば女性保険の必要性は高いように見える。しかし、実際にがんになる確率は統計上は30代が1%以下、40代で2~3%、50代でようやく5~6%まで上昇する。その中に乳がん・子宮頚がんが入っているため、女性に関わるがんに限れば女性保険の必要は乏しい。

確率からすれば女性保険の必要性は乏しいが、それでも必要性を感じる人もいるだろう。そういった人は、女性保険は契約するが途中で解約するか、安い保険に乗り換えるという考え方もできる。その際に抑えるべきは、乳がんの平均年齢が60歳で、子宮頚がんは30~40代という点だ。30~40代で子供を生んでいない人なら、子供のことを考えて女性保険に加入して子供が生まれたら解約するか特約を外せばいい。改めてがん保険・終身保険に変えるか保険に加入しないのもロスを減らせる。節約した分を貯金して最終的に乳がんになった際の備えか治療費全般に回すのもいいだろう。

以上のことから、女性保険は貯金があれば基本的に必要性は低いが、どうしても心配なら短期と決めて契約して他の保険に変更、ないしは貯金して備えるのがいいだろう。