生命保険 解説・用語集

終身保険の種類と特徴

終身保険は目的に応じて幾つかの種類から選択するのが妥当(目的に応じた終身保険を参照)だが、どのような種類の終身保険があり、特徴を持っているのだろうか?

まずベーシックなノーマル型の終身保険だが、契約した段階から死亡保険金があり、保険料の払い込みが完了してから5~7年が経過すると解約返戻金が支払った保険料の合計額を上回り得をするという仕組みだ。このノーマルな終身保険が従来は主流だったが、ここ数年は保険会社の予定利率が低く保険料が高くなってきているため、後述する低解約返戻金型の終身保険が登場し台頭してきている。

ノーマルな終身保険の仕組み

低解約返戻金型の終身保険は、保険料の払い込みが完了するまでの間は解約返戻金がノーマル型より少額(ノーマル型の70%以下)だが、払い込みが完了すれば解約返戻金が一気に大きくなる。ノーマル型よりも保険料は安いが、早期解約をするとノーマル型よりも損をする額が大きい特徴を持っている。

最近では保険料の払い込み完了前の解約返戻金を0円(無解約返戻金型)にして、さらに保険料を安くした終身保険も出ている。イメージとしては、安い保険料を支払いながらも、解約返戻金は割り引かれる前の保険料で積み立てた額と同じという感じだ。保険会社としても途中解約で運用資産を切り崩す可能性が減り、かつ解約されても支払う解約返戻金が少額で済むメリットがある。この型の場合は、とにもかくにも保険料払い込み前に解約しないかが最大のポイントとなる。

低解約返戻金型終身保険の仕組み

ノーマル型・低解約返戻金型でもカバーできないのがインフレで、インフレ対策と貯蓄性の上昇を図ったのが積立利率変動型の終身保険となる。そもそも保険は数年~数十年後に契約時に定めた金額を受け取るため、インフレには弱い特徴がある。仮に20年後にキャベツの価格が100円から150円に値上がりしたとすると、保険で受け取る100円の価値はキャベツ1個から、キャベツ3分の2の価値になるということだ。そのため金利の上昇(普通は金利上昇とインフレは同時進行する)に合わせて保険金額・解約返戻金が増加するのが積立利率変動型の終身保険の仕組みとなる。最低保証があり、一旦増えた保険金は減額しないラチェット方式のため変動するとはいえ安心感がある。

と、ここまでは教科書通りの説明だが、教科書通りにいかないのが経済であり、積立利率変動型の終身保険ではインフレ対策には不足感が否めないのが実情だ。現在、日本銀行は異例の金融緩和・超低金利策によってインフレを進行させており、金利は抑えつつもインフレを1~2%程度進めようとしている。金利を引き上げできるのは何年後になるか分からず、その間に物価は上昇していくことになるだろう。実際、10年もの日本国債の金利は上昇してきていない。積立利率変動型は金利に連動して増加するため、現在の政策下では十分に役割を果たせないということだ。

そこで登場するのが、金利上昇前の景気回復局面で大きく保険金・解約返戻金を増やすことができる変額終身保険が出てくる。この保険の中身は株・債券などで構成された投信のため、それらの値上がり益が出れば保険金などは増加する。ただ、保険という名を借りた投信でしなかく、それなら投信を銀行・証券会社で購入した方が選択肢も多いため、大きな意味があるかは疑問だ。

同様に景気回復局面では、外貨建て終身保険も保険金・解約返戻金を増やすのに一役買う。これは円ではなくドル・ユーロなどの通貨で保険料は運用されるため、円よりも高金利で増えていき円安によっても更なる保険金・解約返戻金の増加が期待できる。一方で当然ながら円高となれば損失が出るうえに、解約・死亡するタイミングを上手く図る必要がある。また、昨今では円安=景気回復という認識が巷に蔓延っているが、小泉政権下では円高と株高が併走していた時期がある。そうなれば外貨建て終身保険でも対応ができないため一応は注意したい。

他方で、ノーマル型・低解約返戻金型も共に死亡保険金が一定という特徴がある。これはメリットでもあるが、30~40歳で自分が死亡すると残された家族の生活に支障を来たす人には、死亡保険金を大きくしたいというニーズが出てくる。ただ、ノーマル型で死亡保険金を大きくすれば保険料の負担が大きくなってしまう。

そこで登場したのが、定期保険特約付き終身保険だ。これは終身保険でも働き盛りのうちは定期保険で死亡保険金を上乗せしておき、不要になれば上乗せを外せる保険だ。例えば、30~50歳までは定期保険特約を付加して死亡保険金を増やしておき、自分が50歳で子供が成人するようなら50歳以降は定期保険を外すといった利用方法ができる。定期保険特約は、更新する度に保険料が上昇する更新型と、保険料が一定の全期型がある。最初は更新型の方が全期型より安いが、徐々に保険料は上昇するため全期型より結局は高い保険料となる。何歳まで定期保険特約が必要かを考えて検討する必要がある。

定期保険特約付き終身保険の仕組み

そして最後に出てくるのが「利率変動型 積立終身保険」で、俗に言うアカウント型保険という保険だ。今までに既述した終身保険は、どれだけ仕組みが異なっても備えられるのは死亡だけだが、死亡以外の備えもしたい(という保険会社の理屈)という要望に応えるべく募集・販売されている。仕組みは他の保険と異なり保険料を積み立てていき、保険料の払い込み完了時に終身保険や年金保険・養老保険などを購入するのが基本的な流れだ。保険料を支払っている若い間は、医療保障特約・定期保険特約があるため死亡や病気に備えられる。

問題としては、今は何を選び今後どうするか?果たして得をしているのか損をしているのか?を自分で全て把握しておき、契約している特約の保障が時流に合致しているかも自分で判断することになる。複雑な仕組みと知識がなければ、大抵は保険会社に流されてしまうため手を出さない方が賢明だ。医療保障が欲しければ医療保険・ガン保険にし、老後資金なら年金保険などを別途で契約するのが妥当だ。

以上のように、その時の時流に乗って終身保険は変化し進化・退化をしている。とはいえ、保険はシンプルにして、何十年後に見直しても自分が即座に内容を把握できるようにするのが一番で、さらに終身保険の最大の焦点は死亡に備えることと確かな貯蓄性が最重要ともいえる。そう考えると様々な種類はあれどノーマルな終身保険か、せいぜい低解約返戻金型の終身保険にしておくのが妥当だろう。為替に少なからず見聞があるなら、外貨建て終身保険に手を出すまでが無難だろう。