通貨選択型 米国リートαクワトロ/ 大和投資信託

米国リートαクワトロ(米リαクワト)/ 大和投資信託
オススメ度:
1
運用会社:
大和投資信託
商品名:
米国リートαクワトロ 毎月分配型(米リαクワト)
地域/決算:
米国 / 年12回(毎月分配)
対象資産:
不動産投信
基準価額:
6,275円(2017年7月現在)
手数料:
0%(申込手数料 ※マネックス) 1.12%(信託報酬)

米国リートαクワトロは複雑な上に上手くいってない戦略も組み込んでる?

この投信はアメリカ及び日本のオフィスビル・商業施設・住宅などの不動産に間接的に投資し、それらの賃料収入や売却益で収益を上げている。通貨選択型という名称が付いているが通貨は自分で選べず、ブラジル通貨のレアルを組み合わせている。2015年にスタートした比較的新しいUSリート型の投信だ。

大和米国リートαクワトロ 毎月分配型の基準価額及び純資産の推移チャート

基準価額は概ね下方向に動いており、僅か2年で30%以上の下落をしている。かなり大きい下落幅ではあるが、分配金再投資基準価額では設定時の数字を超え、順調に上方向に伸びている。そのため分配金込みで考えれば利益は出ていることになる。

純資産は2017年から急激に増えて、今では初期の7倍近くまで膨らんだ。個人投資家から急速に人気を集めたのが分かる。分配金が毎月200円というのも人気を集めた理由だろうが、その中身は翌期繰越分配対象額ではなく収益から出ている。しっかりと収益が出ているという点では上々といえるだろう。

大和米国リートαクワトロ 毎月分配型の上位構成銘柄及びセクター別構成

さて、この投信の仕組みを改めて振り返ってみたい。この投信は基本的に米国リートに投資するのだが、同時にブラジルレアルでの為替取引をして金利収入と為替差益を狙い、さらに通貨のコール売りと米国リートのコール売りで下落に対して一定のヘッジしている。

専門的な話しになるが、コールの売りはプットの買いと同じく下落すれば利益が出るオプションだ。さらにコール売りなら期限までに設定額に到達しなければプレミアムとして収益も出る。このカバードコール戦略はヘッジをする目的では完璧なように見えるが注意点もある。それはコール売りはボラティリティを売っているため、急激なボラティリティの上昇はマイナスになる点だ。現にボラの低い米国リートでは同社のシミュレーションでもプラス効果が出ているが、通貨ではボラの高いレアル相場のためプラスの効果を出せず意味を成していない。

この投信はETFを通じてリートに投資するが、ETFは米国の不動産市場全体を表すダウ米国不動産指数に連動するETFが採用されている。業種別では専門的なリートが多く、店舗用・住宅・オフィスが次いで高比率となっている。

ブラジルの経済情勢と足元の指数

米国のリート・不動産市場の見通しだが、今までは低金利政策によりリーマンショックから回復し継続的な成長をしてきた。しかし、今は金融正常化に動いているおり金利上昇が見込まれている。リートの資金繰りに悪影響が出ないかが懸念されるところだ。

この投信に大きく影響するブラジル・レアル相場だが、ブラジル経済自体は2015~2016年の不況から回復しつつある。ただ、ブラジルには汚職等による政治不安が常に横たわっており、いつ大統領が辞任しても不思議ではない状況にある。さらに資源安が起これば大きくGDPが毀損する恐れもある。

そのためか一時期の新興国ブームが嘘のように、対円でレアルは長期で右肩下がりだ。政策金利は下げ止まりつつあるが、底をつけたか否か不安は拭えない。

次に、純資産ランキング上位の米国リート型の投資信託と、基準価額・直近1年の騰落率・手数料・信託報酬・信託財産留保額・分配金額(手数料等を差し引いた金額)で比較した。分配金が運用による収益から捻出しているかを確認するため、日経新聞でも度々記載される分配金の健全度・健全率(分配金に占める利子配当収入等の割合)も過去6ヶ月の数字で比較した。さらに、この投信を100万円分だけ購入して3年後の解約時には幾らになるか?を、過去1年間の基準価額の騰落が今後3年繰り返すと仮定してシミュレーションした。最後に過去3年の騰落率と分配金を加味し、予想利回りのレンジと最終予想利回りを算出した。

製品名 フィデリティ
USリート
新光
US-REITオープン
愛称:ゼウス
ダイワ
米国リート・ファンド
ダイワ
US-REIT B
米国リートα
クワトロ
基準価額 4,254円 3,108円 4,182円 3,922円 6,275円
騰落率 -9.02% -11.1% -13.5% -10.5% -15.2%
分配金再投資
騰落率
11.4% 10.1% 11.2% 11.2% 17.1%
手数料 0% 2.0% 3.0% 1.5% 0%
信託報酬 1.4% 1.5% 1.5% 1.5% 1.1%
信託財産
留保額
0.3% 0.1% 0.3% 0% 0.8%
1年間の
分配金額
197,461円 193,050円 286,944円 244,773円 382,470円
分配金の
健全度
26.4% 12.0% 9.6% 10.8% 100%
3年間の
分配金額
547,384円 512,251円 782,232円 673,719円 1,108,810円
3年後の
100万
※分配金除く
753,074円 700,937円 647,215円 716,677円 609,369円
予想利回り 2.3%
(-11%~9%)
-1.0%
(-20%~6%)
-2.2%
(-19%~12%)
0.8%
(-13%~11%)
-1.8%
(-20%~19%)
米国リート型の投信の比較表(フィデリティUSリート・新光US-REIT 愛称ゼウス・ダイワ米国リートファンド・ダイワUS-REIT B・大和アルファクワトロ)

上図の通り「米国リートαクワトロ」は、基準価額は他社よりも大きく下落しているが、それを超えて分配金再投資基準価額は上昇している。近々は分配金込みであれば利益が出ていることになる。手数料・信託報酬といった諸経費も安い点もプラスポイントだ。さらに、これだけの分配金を出していながら分配金の健全度は100%と最高値になっており、近々の数字は上々といえるだろう。

この投信を100万円で3年運用した場合だが、直近1年のパフォーマンスが継続すれば元手の100万円は60万円まで減るが、分配金が110万円が手に入れば大きな利益が見込める。ただし、基準価額が僅か2年で30%下落している点を考慮すれば分配金の中身は良いとはいえ、1万口あたり200円の分配金を維持できるかは疑問だ。さらに今まではレアル相場が比較的安定していたが、今後も続くとは限らないのが相場の常だ。過去の実績値から考えてマイナス20%程度の赤字になる可能性は頭に入れておきたい。もちろんリーマンショックのような金融危機なら、それも超える可能性も十二分にある。そのため最終予想利回りはマイナスとした。

最後に結論だが、そもそも仕組みが分かりにくいため、あまりオススメできない投信といえる。完璧に理解できているなら良いが、部分的に理解できない箇所があるなら手を出さないのが得策だ。また、今までのパフォーマンスは良好かもしれないが、なにせレアル相場が大きな重石になる可能性も高い。カバードコール戦略もシミュレーションで大して機能していないことを考えれば、目論見書の為替の影響を相殺するという文言も絵に描いた餅でしかない。どうしても購入してみたい人でも、購入額は全体の資産で数%以下に留めておいた方が賢明だ。