エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)/ 大和住銀投信投資顧問

エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)
オススメ度:
1
運用会社:
大和住銀投信投資顧問
商品名:
エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)
地域/決算:
海外 / 年12回(毎月分配型)
対象資産:
債券
基準価額:
7,455円(2012年10月26日付け)
手数料:
0%(申込手数料 ※SMBC日興証券) 1.48%(信託報酬)

エマージング・ボンド・ファンド・レアルは数字面で非常に厳しい!

この投信は、高利回りの新興国の債券に投資し、さらにブラジルレアルでの為替ヘッジで利益を上げて毎月分配金を出している。このタイプの投信はブームのためか、他社でも三菱UFJ新興国債券レアル・DIAM新興国ソブリンレアル・日興エマージングハイイールドボンドレアルなど、2009年から数多く設定されている。特に、大和住銀ではレアル以外にも豪ドル・ニュージーランドドル・南アフリカランドなど、通貨選択型のコースを設けている。過去1年の分配履歴を振り返ると毎月160円を出している。2010年5月の150円からの増額から2年以上も維持している。堅調といえば堅調だが。。。

エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)・基準価額及び純資産のチャート

まず基準価額だが、他社のハイ債に投資してレアルで為替ヘッジしている投信と、大差の無いチャートだ。現在は小康状態ともいえる横バイの推移が続いている。 累積投資額(分配込みの基準価額)は上向いているが、純資産が増加している気配はなく、どこまで伸びれるかは疑問だ。基準価額を削りながらで15,000円~16,000円辺りで止まるのが妥当なラインか。

ただし、純資産が良くいえば横バイ、悪く言えば漸減状態なのは他投信も同様で、もはや個人投資家からの人気は一巡してしまったと考えるしかない。レアル人気の火付け役であったブラジル債型の投信も同様の状況で、これからの投資家の新規の買い入れは期待できそうにない。流れを止めるにはSMBC日興の販売力に期待するしかあるまい。。。

エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)の上位組み入れ銘柄・国別比率など

上位の組み入れ銘柄では、他社では社債中心のハイ債型の投信もあるが、8割が国債で社債がの比率が低い。地域別では中南米・欧州の比率が高いが、、国別で見ると他社同様にロシアが高比率だ。投資対象の債券の格付けはトリプルB・ダブルB・シングルBが高比率で、特に特色は見られない。他社にない特色としてはトルコの比率が若干高めという点だろうか。

個別の銘柄に目を向けると、ロシア・ブラジル・フィリピン等の新興国の国債が名を連ねている。トルコ同様にイラク国債を上位で組み入れているのが珍しい。イラク国債は格付けも見慣れないNR(格付け無し)で、イラク国内の情勢は2013年に入ろうかという現在も、テロが頻発しておりスンナ派・シーア派の宗教間の問題に決着は見られていない。なぜか2011年段階から組み入れられており継続している。。。

トルコ経済の各種指標及び新興国債券の格付け状況

今後の見通しだが、この投信で投資比率が高めに設定されているトルコ経済について記述する。トルコは長らく大幅に輸入超過となっているが、通貨リラ安が対ドルで30%近く進行したこともあり輸出は大きく伸びている。特に主力の自動車産業・機械・鉄鋼が伸びたようだ。しかし、鉱工業生産指数を見ると、明らかに前年比では成長率が鈍化している。世界景気に対する懸念からか内需が鈍化しているのも起因しているようだ。逆に輸入では資源(石油・天然ガス)が大きく、近隣のロシアから大きく輸入している。貿易の数字を見ると決して良好とはいえないトルコだが、その格付けは中国・ブラジルほどではないが、着実に上昇している。2012年6月にはムーディーズも格上げし信用力増は間違いない。

次に、他社の新興国ハイイールド債型の投資信託(純資産ランキングで上位)と、基準価額・手数料・信託報酬・利益・分配利回り等を比較した。「利益=分配金-手数料-信託報酬-信託財産留保額」
加えて、基準価額の増減も加味して3年後に100万円が赤字か黒字か?を計算した。その場合、過去1年間の基準価額の増減が今後3年間も繰り返し、分配金も現状維持と仮定した。
計算上での考え方は「前年比で現在の基準価額がマイナス5%の場合、1年後・2年後・3年後も5%ずつ減額するとすると、3年分の分配金を足すと元金の100万円を超えているか否か?」※増減率は1年前の基準価額から現在まで何%下落したか?を表す。一般的な騰落率とは異なる数値。

商品名 野村
グロハイ債
資源国通貨
三菱UFJ
新興国債券
レアル
大和住銀
エマージングボンド
レアル
SMBC
日興ニューワールド
債券
新興国債券
ファンド
豪ドル
基準価額 6,275円 7,836円 7,455円 6,973円 11,213円
増減率 -5.0% -17.6% -13.0% -10.2% -1.8%
手数料 4.0% 3.0% 0% 3.5% 3.0%
信託報酬 0.78% 1.52% 1.48% 0.99% 1.52%
信託財産
留保額
0.5% 0% 0.5% 0% 0%
分配利回り 18.3% 29.1% 16.2% 19.7% 19.9%
3年分の
利益額
550,305円 873,236円 486,787円 589,832円 596,512円
100万で
3年運用
※基準価額増減考慮
1,361,615円 1,401,780円 1,139,821円 1,280,113円 1,512,616円
最終予想
利回り
10.84% 11.92% 4.46% 8.58% 14.79%
新興国ハイイールド債型投資信託の比較表(野村グローバル・ハイ・イールド債券投信・三菱UFJ新興国債券レアル・大和住銀エマージングボンドレアル・SMBC日興ニューワールド債券・新興国債券ファンド豪ドル)

上図で「大和住銀エマージング・ボンド・レアル」を比較したが、まず基準価額は1年前の2012年10月の8,571円から現在の7,455円まで、マイナス13%とマイナス幅は大きめだ。その分だけ分配金に回しているのかと思いきや、分配利回りでは16.2%と決して他社よりも高くはない。その他の諸経費を見ると、手数料こそSMBC日興証券を利用すれば0%で済むが、信託報酬は1.48%と高額だ。数字を総合すると、基準価額のマイナス幅が足を引っ張って、最終予想利回りでは5%を切っている。他社のハイ債型の投信と比較すると、明らかに見劣りする数字で、何とも厳しい結果となった。。。

結論としては、数字重視の人なら間違いなくスルーしていい投信だろう。安定して長期運用を狙いたい人でも、基準価額(資産)の安定感を考えてオススメはできそうにない。構成銘柄を見ても、イラク国債を組み入れていることもあり、若干の疑念があるのも事実だ(もちろん、イラクの国内情勢が安定すれば、石油埋蔵量も多く経済が大きく進展する可能性も否定はできないが)あえて、この投信を購入するポジティブな理由が数少ないというのも事実だ。。。現在保有中の人は、今の累積投資額の上昇トレンドが止まるまでは様子見でも良いが、その後はタイミングを見計らって乗り換えを検討して良いだろう。リスクをとって利回り重視するなら同じくハイ債型の投信かリートあたりを検討した方が良いだろう。