短期豪ドル債オープン(毎月分配型)/ 大和住銀投信投資顧問

大和住銀投信投資顧問・短期豪ドル債オープン(毎月分配型)
オススメ度:
2
運用会社:
大和住銀投信投資顧問
商品名:
短期豪ドル債オープン(毎月分配型)
地域/決算:
オセアニア / 年12回(毎月)
対象資産:
債券
基準価額:
6,669円(2012年7月6日付け)
手数料:
1.4%(申込手数料 ※大垣共立銀行) 0.94%(信託報酬)

短期豪ドル債オープン(毎月分配型)は分配金・分配利回りこそ大きいが?

この投信は、高金利で高格付けの豪ドル建ての国債・公社債や短期金融商品で運用し、毎月分配を行っている投信だ。豪ドル債を投資対象としている投資信託の中では、純資産額は1兆円でトップだ。各銀行の投資信託の販売ランキングでも常に上位にあり、投資家からの人気が高い投信といえる。

過去1年を振り返ると、分配金は毎月分配で100円(年間1,200円)を出している。さらに2009年5月まで遡っても100円を出していた。今後も100円を維持できるか否か。。。

大和住銀投信投資顧問・短期豪ドル債オープン(毎月分配型)の基準価額及び純資産の推移チャート

まず基準価額だが、2009年から長期の下落が続いている。1年前の基準価額は7,911円で、現在と比較すると約15%も下落している。他社との比較は後述するが、この下落幅は他社よりも大きい。

分配金再投資額(累積投資額)は、基準価額とは反対に上昇しているが、それでも2011年から上昇の勢いは止まりつつある。騰落率も1年でマイナス7%という厳しい数字で、今から伸びても17,500円あたりが限界と考えられそうだ。

また、純資産の増加は止まりつつある。投資家からの人気は高く販売件数も伸びているはずだが、その割りに伸びていないのは、それ以上に資産を削って分配金を出しているのと、豪州経済が2012年から伸び悩んでいるためか。。。

大和住銀投信投資顧問・短期豪ドル債オープン(毎月分配型)の上位構成銘柄及び年間収益率

この投信の資産内容は当然、国別ではオーストラリアの比率が高いが、若干だけドイツ・フランスといったヨーロッパが組み入れている。欧州債務問題もあり不安もあるが、比率は低くパフォーマンスに大きくは影響しないだろう。

上位の組み入れ銘柄の「AUST & NZ BANKING」はオーストラリア・ニュージーランド銀行、「WESTPACK BANIKING」は、豪州に設立した初の銀行で現在はニュージーランド・ロンドン・香港などにも支店を構えている。こういった社債の他に州が発行する州債などもあるが、オーストラリアの金融関連の企業の社債の比率が高い。オーストラリア政府が現在とは逆に金利引き上げ、金融引き締めを行うと影響は大きいだろう。

オーストラリアの政策金利及びGDPの推移チャートなど

今後の見通しだが、豪ドルは2012年5月までは低迷していたが、6月に入り反発を始めた。5月までのリスクオフからリスクオンに傾き、他のブラジルなどの新興国通貨よりも、いち早く回復したのが豪ドルの強さの証明だろう。

オーストラリア市場自体は堅調な流れで、前年比の実質GDPでも4%以上の伸びとなっている。ただし、雇用を見ると大幅に改善しているわけではなく、失業率はピークの5.3%から5.1%へと非常に緩やかな回復に留まっている。物価の伸びも鈍化していることを考えれば、まだまだ本格的な回復には至っていないと見るべきだろう。

次に、他社の豪ドル債の投資信託(純資産ランキングで上位)と、基準価額、手数料、信託報酬、分配利回り、100万円分を3年運用した際の運用結果も比較した。計算式は下記で分配金は変動しないと考える。
「分配金-手数料-信託報酬-信託財産留保額 = 利益額」※信託財産留保額は解約時に発生する解約金
最後に、基準価額の増減も加味して3年後に100万円が赤字か黒字か?を計算した。その場合、過去1年間の基準価額の増減が今後3年間も繰り返し、分配金も現状維持と仮定した。

計算上での考え方は以下(面倒な方は読み飛ばして頂いて構いません)
「前年比で基準価額がマイナス5%で現在の基準価額が1万円とすると、1年後は9,500円(10,000×95%)、2年後は9,025円(9,500円×95%)、3年後は・・・と減少すると仮定する。3年後の基準価額に、3年分の分配金を足すと元金の100万円を超えているか否か?」
※増減率は1年前の基準価額から現在まで何%下落したか?を表す。一般的な騰落率とは異なる数値。

製品名 大和住銀
短期豪ドル債
大和投資信託
ハイグレード
オセアニア・ボンド
野村
豪ドル債オープン
UBS
オーストラリア債券
三井住友
豪ドル債ファンド
基準価額 6,669円 7,220円 9,780円 9,044円 7,468円
増減率 -15.7% -6.2% -2.2%? -2.7% -9.9%
手数料 1.4% 1.3% 3.1% 2.1% 2.6%
信託報酬 0.94% 1.31% 0.66% 1.05% 1.29%
信託財産
留保額
0% 0% 0.5% 0.3% 0.3%
分配利回り 17.1% 10.3% 11.6% 9.6% 14.8%
3年分の
利益額
511,611円 309,730円 348,298円 286,943円 443,357円
100万で
3年運用
※基準価額増減考慮
1,096,695円 1,122,098円 1,247,740円? 1,183,505円 1,147,000円
最終予想
利回り
3.12% 3.91% 7.66%? 5.78% 4.68%
豪ドル債型投資信託の比較表(短期豪ドル債オープン・大和投資信託ハイグレードオセアニアボンド・野村豪ドル債オープン・UBSオーストラリア債券・三井住友豪ドル債ファンド)

上図の通り「短期豪ドル債オープン」の分配利回りはトップだが、基準価額の増減を加味すると他社には劣る運用成果になる。分配金は、かろうじて100円を維持しているが、運用益ではなく、かなり純資産を削っているのだろう。2011年7月の基準価額が7,911円で、1年で15%近く下落しているマイナス幅は純資産額が上位の投信の中ではワーストだ。

また、分配金再投資基準価額の騰落率でも、この投信はマイナス7%だが、他の豪ドル債系の投信はマイナス1~3%で留まっており、その点でも運用で苦戦していると考えられる。100万円で3年運用した場合、「UBSオーストラリア債」とは約10万円の差額が生じる計算だ。

最後に結論だが、この投信は分配利回りこそトップだが、基準価額のマイナス幅が他社よりも大きく、強くはオススメできそうにない。純資産の増加も止まりつつあり、分配金を維持し続けるには今まで同様に基準価額を削っていく必要がありそうだからだ。やはり基準価額(純資産)を極力削らずに、運用益でも少なからず分配金を出しているであろうUBSのオーストラリア債、もしくは大和投信のハイグレードも検討したいところだ。

現在保有中の人は、このペース(基準価額が1年マイナス15%)でも、赤字運用にはならない計算にはなっている。とりあえず保有しても大丈夫だろうが、基準価額の下げ幅が15%を超えるか、分配金が100円以下になると、一気に赤字運用になる可能性が高い。その段階で乗り換えか否かを検討すると良いかもしれない。