損害保険 解説・用語集

自転車事故に合う確率は?

自転車事故は、自転車の気軽さと低予算の移動手段という側面に反して、他人にケガを負わせた場合の高額な賠償額で、昨今ではよく問題になっている。それでは実際に自転車で事故に遭う確率は、一体どの程度なのか?

まず、一番シンプルな計算方法で算出してみる。2013年の警察庁が公表しているデータでは年間の交通事故件数の約65万件のうち、加害・被害を問わず約20%で自転車が絡んでいる。自転車事故は年間で約13万件の事故が発生しているようだ。自転車産業振興会調べでは日本全国で登録されている自転車は合計で約7,000万台で、同協会調べでは全国の自転車のうち「常時使用している」ものは約52%になるという。そのため、3,500万台の自転車が利用中で、そのうち13万台が1年間のうちに事故に遭遇することになる。これを計算すると13万÷3500万=0.3%となり、1年間で事故に遭う可能性は0.3%となる。自動車が同様の計算で年間0.8%で事故に遭うことを考えれば、自転車で事故に遭遇する可能性は自動車よりも低いことが分かる。

逆に1年間で自動車事故に合わない確率は99.7%となるが、中1の13歳から定年後63歳まで50年乗ると、99.7%×99.7%×99.7・・・(50乗)すると86.0%となり、運転開始から定年までに事故に遭遇しない確率は約86%(事故に遭うのは14%)ということになる。これも自動車の66.9%よりも高い数字で、自転車事故に遭遇する可能性は相当に低いことが分かる。

ここまでは、自転車が加害・被害の両方で計算してきた。しかし、これだけでは十分とはいえない。警察庁のデータには自転車が被害者ではなく加害者となった場合の数字も公表されている。自転車保険(+個人賠償責任補償)を検討するうえでは、加害者となる場合の確率の方が気になるところだ。

その自転車が加害者となった事故は年間約2万件で、自転車事故全体の件数の約15%を占めている。ということは、前述の計算方法では、1年間で自転車で加害者になる確率は0.05%となり、事故自体に遭遇する可能性より一桁違う数字になる。宝くじよりも確率は高いが、その確率は一般常識からして恐ろしく低い。

自転車と自動車の事故発生確率の比較

一般的な確率からして、自転車保険はほぼ不要といえる。しかし、注意すべきは自転車に乗る人の年齢だ。自転車乗用中の死傷者でみると、15歳以下が17.8%、16~24歳が22.3%、65歳以上が17.6%となっている。高額な賠償額が課された裁判でも、加害者が未成年か若年層、被害者が高齢というケースが目立つ。常識的に考えて、中高生の方が社会人よりもスピードを出し、道路交通法も熟知していないことは容易に想像ができる。全体の確率は低くとも、中高生が自転車を運転するなら自転車保険の必要性は否定できない。

また、個々人の性格・傾向によっては必要性は高いともいえる。自動車と同様に、自転車でも走行距離が長いほど事故を引き起こす可能性が高いとすれば、中高生が通学で自転車を利用するなら自転車保険は一考の価値アリだ。高齢者の場合は逆に自分のケガに対しての補償として、自転車保険(傷害保険)は検討に値する。高齢者になれば、一見すると転んだだけでも後遺障害に及ぶ場合もあろう。

以上のように、計算上では自転車事故に遭遇する可能性は低い。ただし、運転者の年齢・環境(通学路が山道で人がいないなら不要)から考えて、必要性は高いケースも出てくる。毎月500円から加入できる自転車保険もあるため、自転車のメンテナンス代と考えて万が一に備えるのは、決して無駄ではないといえる。